湯山玲子×二村ヒトシ×カンパニー松尾と考える、“M女”からの解放と“女性向け”性コンテンツの方向性
湯山「いや、実は男性視点のAVでも、女性は攻められて興奮する女性に意識をシンクロさせるし、BLなんぞで鍛えているので、攻める男性の気持ちにもシンクロできるところがありますからね。例えば、松尾さんのハメ撮りAVは、松尾さんの責め言葉と、女を前にいきり立っていく感じがセクシー。女優に感情移入することで、松尾さんとヤッてる感じがすると思う。ヌケるんじゃないですか?」
二村「松尾さんにヤラれたいという気持ちで、松尾さんのAVを好む女性は多いと思います。そもそもAVを見る女性は、抵抗なく松尾さんのハメ撮りを見たり、“100人ぶっかけ”を見ているんです。シルクラボは、そういったAVに抵抗がある女性に対して、『激しいフェラチオやレイプのような表現、顔にかけるシーンはなく、安心して見られる』ことをウリにして販売しているわけです」
湯山「マーケットとしての“枠”があると、買いやすいというのはありますね。やっぱり、抜き差しそのもののアップなんぞは女の萌えどころじゃないし、セックスに至るまでのねっちょりとした前戯が長い方がいい。男性にも、そういうAVが好きな人はいるんじゃないかと思う」
二村「今後、男性向け、女性向けといった垣根はなくなっていくでしょうね。男性監督が撮ったAVを見る女子もいれば、BLを楽しむ男子も増えてくるのでは」
松尾「実際、AVをよく見る女の子が検索機能を使いこなし、内容をよく選んでいるかというと、そうでもなさそうだしね」
――女性向けの性コンテンツは、今後どうなっていくと思いますか?
湯山「日本映画にも可能性を感じます。私は“ニュー濡れ場”と呼んでいるんだけど、例えば中沢けいの小説を映画化した『海を感じる時』(14年)。古典的なラブストーリーの中で、男と女の関係性ををねちっこく描き、セックスに至るまでの場面づくりなんかは、セリフに萌えどころ満載。こういった、一連の映画に出ているのが、池松壮亮クンで、“ニュー濡れ場”の立役者です(笑)。まあ、文芸作品ですから、堂々と見ることができるし。言い訳も立つ」
二村「それなら、『これはポルノではありません』という言い訳が成り立ちますもんね」
湯山「そう、言い訳が必要。女性向けのAVは、そういう男女の関係性を描く丁寧さが必要かもしれない」
二村「腐女子に限らず、女性がもっと自分のツボのエロいコンテンツに出会う機会が増えてもいいと思うけれど、『興奮したらいけないんじゃないか』という制度に縛られている人はまだ多い。昔からセックスアピールのある俳優はいたけど、今ようやく女性のヌキ目的になる可能性があるわけですね」
欲望のファンタジーは十人十色。“男性だから”“女性だから”ではなく、個人によって好みは異なる。それと同時に、カップルの形もそれぞれ。あふれる情報に惑わされることなく、本当に気持ちがいいと感じる快楽を享受できる時代へと、少しずつ進んでいるようだ。
(構成/安楽由紀子)