『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』著者・稲葉圭昭氏インタビュー

「ムショには反省してない連中もいます」逮捕された元警部が語る、覚せい剤の誘惑と刑務所生活

2016/06/24 15:00

■前科があると仕事が見つからず、罪を重ねる

――服役されていた千葉刑務所は、犯罪傾向が進んでいない(初犯など)長期刑の受刑者が中心ですね。

稲葉 無期懲役も多いですね。無期刑の人は期間が決まっていないので、「仮釈放」を待つしかありません。看守に逆らうなど問題を起こすと仮釈放の機会を逃してしまうので、静かな人が多い印象でした。

 一方で、有期刑の人たちには「懲りない面々」も多いですよ。「次は絶対にうまくやる」みたいなことを、よく言っていました。不況もあって、シャバに出たところで、前科があるとまともな仕事がなかなか見つかりません。結局、罪を重ねる道を選んでしまうんです。

 また、獄中生活は、拘禁性ノイローゼなどの症状を起こしやすいです。たとえば食事の時に味噌汁の入った椀をじっと見つめ、「……虫がいる」とつぶやいている懲役囚もいました。もちろん入っていません。食事は10分で食べなくてはならないので、そんなことをしているヒマはないのですが、もう冷静な判断ができなくなっていたのでしょう。


 刑務所は、基本的には早寝早起きで健康になれるのですが、医療体制が整っていないので、持病を悪化させる人や、心を病む人は少なくありませんでした。

――刑務所の暮らしはいかがでしたか?

稲葉 単調ですが、分刻みで規則だらけです。朝6時半に起床して、食事、刑務作業、入浴、運動などで一日が終わります。土日と祝日、年末年始は「免業日」といって刑務作業がなく、面会もないので読書をしたりして過ごします。楽しみは手紙と面会だけでしたね。私は十分懲りました。

――「元警察官」ということで、イジメはありませんでしたか?

稲葉 なかったですね。最初は黙っていたのですが、そのうち「もしかして、あの事件の?」みたいな感じでバレていました。でも、むしろ仲はよかったですね。


――ご著書『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』を原作とした映画『日本で一番悪い奴ら』が公開されます。

稲葉 娯楽作品ですが、かなり原作に忠実に描いてもらっています。「俺はこんなことをやってきたのか……」と、ちょっと重い気分になりましたが、改めて自分の過去を振り返ることができて本当によかったと思います。映画化は「人生の区切り」となりました。
(伏見敬)

稲葉圭昭(いなば・よしあき)
1953年北海道生まれ。76年に北海道警採用。「銃器対策のエース」として銃器捜査や暴力団捜査に力を注ぐ一方、自ら覚せい剤の使用や密売に手を染め、2003年5月に懲役9年・罰金160万円の刑が確定。出所後に上梓したベストセラー『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』が映画化され、『日本で一番悪い奴ら』のタイトルで6月25日に公開。現在はいなば探偵事務所主宰。

最終更新:2016/06/24 17:00
恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白 (講談社文庫)
まさに「塀の中の懲りない面々」(安部譲二)