カルチャー
森奈津子氏インタビュー

「オナニーは女性を幸せにするべき!」SF官能作家が担う、“女のエロを解放する”という使命

2016/05/04 16:00

――実際にお付き合いされたのは、男性と女性どちらが多かったですか? 相手が男性である場合、女性である場合で、付き合い方や心境に違いはあるのでしょうか?

 圧倒的に男性が多いですね。男性と付き合おうが、女性と付き合おうが、私自身は変わっていないと思います。ただ若い頃、男性と交際していた時には「もしかしたら私たち、将来的に結婚するのかな?」という意識は芽生えましたが、女性相手だと「この先、お互い幸せになれるのかな?」という鬱屈した気持ちになることもありました。一方で、女同士のカップルだと「女らしさ」を押し付けられないという気楽さがあります。男性には「女の子ってこうだよね」っていう偏見を押し付けてくる人も多いですからね。昔、彼氏とデートした時に、何気なく「2人でお弁当を食べたい」と思い、作って行ったことがあるんです。そうしたら、彼に、「やっぱり女の子だよね」と言われて。別に、女の役割としてやったわけではないのに、と思いました。

 けれど、恋愛においては、どんなにひどい別れ方をしても、その人を恨んではいけない、と思ってます。今になって「あの人と付き合って、私は幸せになれたのだろうか?」と疑問に思う相手もいますが、その人と一緒にいる時は心身ともに最高に幸せでしたし。良い思いは大切にしたいですよね。作家やってると、負のエピソードもネタになりますけれど(笑)。

――セックス面で男性は、「ここは、こうして」など文句が多いような気もします。『魔女っ娘ロリリン』の主人公も、「男が気持ちよくなること」が重要だと考えていました。

 男性はデリケートだから大事にしないといけないな、とは感じてました(笑)。エロ創作物を鵜呑みにして、女性を激しく愛撫すればいいと思っている人も多いので、男女がお互いにもっとオープンになればいいと思います。女同士だと体が同じ構造なので、わかる部分も多いのですが。私にとって、セックスはコミュニケーションなんです。自分ひとりではできませんから。

 昭和の時代は「女性に性欲がある」というだけで驚かれるようなところがありましたが、相手に不満を隠しながらセックスをするって、不幸だと思います。ただ、経験のない人を蔑むような風潮はあってはいけない。セックスの相手がいないと女性は性的に解放されないというのも、おかしな話だと思います。

――セックス経験が乏しいと「モテない」などと偏見の目で見られがちです。

 セックスについて語る女性は多くても、オナニーについては語りたがらないのは、「欲求不満」だと誤解されてしまうからですよね。男性だったらオナニーしていてもモテないやつとは思われません。本当はオナニーは女性を幸せにできるはずだと、信じています(笑)。

――森さんは、世間の偏見や国の規制への疑問を抱き続けているのですね。

 そうですね。女性がエロい創作物を作ることが気にくわないという人たちは一定数存在していて、エロマンガ家でも女性であることを隠して描いている方がいます。女性が性的に解放されることを恐れている人が大勢いるなんて、それこそ、女性差別だと私は思うんですけどね。女がエロを書いて誰を喜ばせようと、それは自己決定権に基づくものなのだから、他人がとやかく言うべきではないと思います。

――森さんの作品には、そういった主張がありつつも、エゴイスティックな部分や押し付けがましさを感じません。今後はどのような作品を書かれていこうと思っていますか?

 私は強い女を書くのが好きなんです。SMシーンでも、実はMの女性が主導権を握っていたという展開など。強い女に導かれれば、男はもっと気持ち良くなれるかも、こんな経験ができるかも、というエピソードを描きたいですね。世間では軽視されているSFや官能やコメディに関しては、「私はそのジャンルが好きだから、私に書かせてよ」という気分です。もし、そういった分野に私自身が少しでも貢献できたら、うれしいですね。
(取材・文/いしいのりえ)

森奈津子(もり・なつこ)
東京生まれ。少女小説でデビュー後、“性愛”を核にSFやホラーなどさまざまなジャンルの作品を執筆する。著書に『かっこ悪くていいじゃない』(祥伝社)、『姫百合たちの放課後』(早川書房)、『先輩と私』(徳間書店)などがある。

最終更新:2016/05/04 16:00
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