「オナニーは女性を幸せにするべき!」SF官能作家が担う、“女のエロを解放する”という使命
“セックス”をテーマの1つに小説を執筆している女性作家たち。彼女たちは恋愛、セックスに対して、人よりも強い思い入れ、時に疑問やわだかまりを抱えていることも。小説にして吐き出さずにはいられなかった、女性作家の思いを、過去の恋愛や作品の話とともに聞く。
【第7回】
森奈津子/『魔女っ娘ロリリンの性的な冒険』(祥伝社文庫『私にすべてを、捧げなさい。』より)
恋人の幹久から、セックス中にイクふりをしていることを責められた私。自宅に帰ると、新聞受けにアニメ「魔女っ娘ロリリン」のミラクルバトンが突っ込んであることに気づいた。小学生の頃を思い出し呪文を唱えると、一瞬のうちに“魔女っ娘”に変身してしまった。レディという名の猫に、「魔法で夢をかなえて」と言われ、「セックスでちゃんとイケる体になーれー!」とお願いすると、あそこだけが若返っていて――!?
――魔女っ娘ものの官能小説、また性器だけが若返るという異色の作品ですが、執筆前にどんな構想を練られたのでしょうか?
森奈津子氏(以下、森) 我が国では十数年前から少しずつ性表現規制が強まっていって、最近は官能小説でも「18歳未満あるいは18歳以下の性行為は書かない」という取り決めがされている媒体がほとんどなんです。版元も著者も、変なところから文句をつけられないように、自主規制する方向に行っちゃうんですよね。私はそれが「実につまらないな」と思っていまして(笑)。個人的には「初潮や精通を迎えた年齢の登場人物であれば、官能小説で性行為を描いても良いのではないか?」と感じていまして、「17歳はダメ」と言われると、実際の高校生では経験している子も多いのに、なぜ官能小説ではダメなんだろう? という疑問が湧いてきます。そこで、「これなら誰も文句つけられまい」と、体の一部だけが若返るという設定にしたんです(笑)。
――性表現の規制についてはよく聞きます。成人の主人公が「10代の頃の性体験を回想するシーン」も難しいとか。“魔女っ娘”というモチーフが出てきた理由は何でしょうか?
森 私が子どもの頃って、魔女っ娘アニメが繰り返し再放送されていたんです。『魔法使いサリー』や『ひみつのアッコちゃん』、また『ふしぎなメルモ』は、幼い女の子が大人に変身するという設定で、今思い返すとエロティックなストーリーでしたよね。そういった作品に思い出深いものがあったので、ネタにしたいと思ったんです。私自身、女オタクの成れの果てですから(笑)。
――この作品は、男性読者向け、女性読者向け、どちらを意識して書かれましたか?
森 この作品が掲載された「小説NON」(祥伝社)は完全に男性向けで、官能小説や時代小説、ミステリなどが人気の小説誌なんです。いわゆるおじさん向け雑誌ですが、『魔法のプリンセス ミンキーモモ』などを愛でていた成人男性も、今ではおじさんなので、そういった方に向けて書いてもよいのではないかと(笑)。
私の作品は、SFファンの男性もよく読んでくださっています。ミステリとSFが中心のハヤカワ文庫にも、私のレズビアンもの短編集やエロティックSF短編集が入ってます。
――『魔女っ娘ロリリンの性的な冒険』にも、レズビアンシーンがありました。男性はどういう立場でレズビアンものを読んでいるのでしょう?
森 男性にとっては、知らない世界を垣間見るような感覚なのではないかと思います。最近は性の多様性もよく話題になっていますし、レズビアン願望や女性化願望を自覚している男性も結構いらっしゃるのではないでしょうか。