育児中の女性も在宅で正社員並みに働ける クラウドワーキングのプロが語る、成功の秘訣
働き方の多様化が進んでいる。これまで、お金を稼ぐ手段や方法といえば、会社に所属してフルタイムや契約社員として働くか、個人事業主として独立するか、はたまたアルバイトとして雇われるかなど、そう多くなかった。しかし、ネットの普及とともに、場所や時間にとらわれず働くという選択肢も出てきている。
その最たるものが「クラウドワーキング」。企業が不特定多数の個人に向けて発注した仕事を、ネット上でマッチングのうえ受注する労働形態だ。発注する企業と受注する個人を仲介する、いわゆるクラウドソーシング事業者の中でも「クラウドワークス」は、日本最大規模の84万人以上の会員数を誇る。エンジニアやデザイナー、ライター、ホームページ制作者など、仕事の種類も188以上と豊富だ。
未経験であっても実力さえあれば仕事を受注することも可能だが、実際は単価が高い仕事ばかりではない。クラウドワークスに登録し、仕事をしたことがある女性500人に調査をしたところ、最高月収の割合は、「1万円から3万円未満」が30.2%と最も多い。クラウドワーキングだけで食べていける人は、極めて少数だといえるだろう。
その一方で、「20万円から100万円以上」の層は2.8%と少なからず存在する。クラウドワークスでは、報酬額が多く発注者の満足度が高いなど、仕事能力に優れた人材を「プロクラウドワーカー」として認定。有名企業案件や高単価案件を優先的に紹介するなどの制度を導入している。
3月18日に開催されたクラウドワークス主催のイベント「CrowdWorks Adventure2016」には、プロクラウドワーカー2名が登壇。彼女たちがどのようにキャリアを積んできたのか、自身の経験談が語られた。
■育児優先で会社を辞め、海外からの仕事も受けるデザイナー
まずは、4歳と1歳の子どもの母親でもある森脇禄さん(33歳)。デザイン業で月収40万円を稼いでいるという。それまで建築関連の企業に勤めていた森脇さんだが、出産を契機に在宅で仕事をするデザイナーに転身したそう。
「2度の出産を経験したことで、仕事を諦めて退職する道を選びました。企業に勤めて安定したいという気持ちはありましたが、子どもができた時点で、復帰するのは厳しいという結論しか出ませんでした。育児は初めての経験の連続で、日々変化します。そのため、事前に何かを予定するというのは極めて難しいですし、仮に育休とか復帰とか制度が整っていたとしても、私自身も家族も納得する形で働くことはできないと思いました」(森脇さん)
生活に「育児」というオプションが加わり、ライフステージの転換期を迎えた森脇さん。時間の使い方だけではなく、自分自身の価値観も変わっていったという。
「前職では、建築現場に出向かないといけないこともしょっちゅうで、時間も体力も必要な仕事でした。それでも、『子どもができても、ずっと続けていくだろうな』と思っていました。でも、実際に出産してみると、体力や精神状態ですら自分で把握できない状態。さらに、子どもと一緒にいたいという気持ちは、自分でも想像できないものでした。その中で、会社を辞めたきっかけは長男の病気の発覚。私にとっては、何より子どもが最優先だったので、退職まで時間を要さず、あっさりと辞めてしまいました。ただ、働くこと自体を諦めたわけではありませんでした。生活費が必要というのはあったのですが、子どものそばに居続けながら、やりがいがある仕事をしたいなと思うようになりました」(同)
そんなときにクラウドソーシングの存在が、希望する働き方の受け皿のようになってくれたという。
「これまで、イラストレーターを少し使ったことがあったので、デザインの仕事ができないかなと思いました。でも、デザインの知識はゼロ。そんな私をデザイナーに導いてくれたのは、コンペでした。1年間で500件ほどひたすら応募し続けて、クライアントの出会いを少しずつ増やしていきました。この1年はそれなりにつらくて、最初はデザイナーと名乗ることも気恥ずかしかったのですが、仕事を受注できるようになって、徐々に自覚が生まれてきました」(同)
クライアントに育てられたと語る森脇さん。努力と行動力で仕事の縁をたぐり寄せ、仕事量もだんだんと増えていったそう。
「最初は子どもが寝ている間に仕事をしていましたが、仕事が増えると夫にも協力を得て、スタイルを変えていきました。今では週約40時間と正社員並み。基本はオンラインなので、移動時間を短縮できます。何よりも子どもたちの成長に寄り添えたことは大きいです。会社を離れたことはキャリアダウンではなく、キャリアアップだと思えています。これからどんなライフイベントがあったとしても、自分でコントロールして、バランスを取れるという考え方もできるようになりました。将来的にも海外移住や法人化とか、可能性は無限に広がっているなと思っています」(同)
今は海外から依頼を受けることもあるという。オンラインは簡単につながれるだけあって、逆に強いコネクションは築きにくいのではないかと思われがちだが、森脇さんはクライアントと深いつながりを感じているようだ。
「育児も家庭も仕事も諦めない、少しずつですが、満足するライフスタイルに近づいていっています。クラウドソーシングというツールを使って得られた、仕事のチャンスと効率の良さ、そして柔軟性が私を支えてくれています。新しいキャリアを積めて良かったと思っています」(同)