「吃音症はメガネをかけているのと同じ」“どもり”の漫画家が語るコンプレックス克服法
言葉がうまく出てこないコミュニケーション障害、吃音症。いわゆる、「どもり」は昔から存在している障害ですが、認知度はそう高くない印象です。漫画家の安藤たかゆきさんも、吃音症に悩まされた1人。現在はニコニコ静画にて、吃音症をテーマにしたエッセイ漫画『どもる私がコンプレックスを解消できるその日まで』をアップしています。今回は、安藤さんに吃音症の苦難や、社会からの偏見について聞きました。
■学校でいじめられるようになってから吃音症に気付いた
――『どもる私がコンプレックスを解消できるその日まで』には、吃音症を発症したのは小学生の頃と描かれていますよね。自分で何か、しゃべりにくくなったな、など感じたのでしょうか?
安藤たかゆきさん(以下、安藤) 学校でいじめられるようになってから気付いた感じです。「やーいやーい」とからかわれ、よく泣きながら家に帰っていましたね。バカにされるというのが一番嫌なんですよね。国語の時間、朗読をする際も、どもりまくってからかわれていたのですが、先生も見て見ぬふりで……。
――いじめは、ずっと続いたのですか?
安藤 いえ、小学5〜6年生になったあたりで、そうやってからかうのはいけないのではないか、という意識がみんなに芽生えたようで、いじめられなくなりました。中学校に入学すると、むしろ私がどもるとみんなが笑ってくれるので、どんどんしゃべるようになりましたね。人が喜ぶことが大好きで、しまいには学級委員長に推薦されるようになりました。
――みんなが笑うというのは、からかいの笑いではなく?
安藤 はい。明らかに違いました。普通に「おっかし〜い!」みたいな、素直な笑いです。
――安藤さんは、根が明るいのですね。漫画を読んだ読者からは、どんな反応や感想が寄せられていますか?
安藤 吃音に限らず、コンプレックスを抱えている人はたくさんいます。そういう人から「コンプレックスと向き合う安藤さんの姿を見て、元気が出ました」という声や、「自分も吃音だけど、これはすごくわかる」という感想もあってうれしいですね。
■吃音症は訓練して治る方もいますが、必ずしも治るとは限りません
――吃音症といえば、どもりに悩まされたイギリス王ジョージ6世をモデルにした映画『英国王のスピーチ』(日本での公開は2011年)は、第83回アカデミー賞で作品賞など4部門を受賞するほど話題となりました。安藤さんは、この映画をご覧になりましたか?
安藤 はい、観ました。吃音症の人でないとわからないことがたくさん描写されていたので、逆に心配になってしまいました(笑)。特に、人の優しさがつらいというシーン。吃音症でない人は、人に優しくされるとうれしいと感じると思いますが、吃音がコンプレックスの人たちは、気を使ってもらうと傷付くんですよね。余計自分がみじめになるというか。私が学生時代の後輩と話していて心地よいのは、どもりを笑い飛ばしてくれることです。たとえるなら、メガネをかけている人には、サッカーやバスケをするとき、「メガネ大丈夫?」みたいに普通のこととして聞きますよね。吃音もそういう感じで一般的になってくれたらいいと思います。
――メガネとは、わかりやすい例えですね。今、吃音症をテーマに漫画を描いているのは、やはり多くの人に吃音症というものを知ってもらいたいからですか?
安藤 知ってもらいたいです。練習すればきちんと話せるとか、落ち着いて話せば大丈夫でしょ、と言う人もいるので、そう思う人がいなくなってくれればいいなと思います。緊張してどもるのと、吃音のどもりはまったく別物なんです。吃音の会のようなもので訓練して治る方もいますが、必ずしも治るとは限りません。