[連載]悪女の履歴書

11歳少女はなぜ友人を殺めた? 「佐世保小6女児同級生殺害事件」と少年犯罪の現在

2016/04/03 21:00

世間を戦慄させた殺人事件の犯人は女だった――。日々を平凡に暮らす姿からは想像できない、ひとりの女による犯行。彼女たちを人を殺めるに駆り立てたものは何か。自己愛、嫉妬、劣等感――女の心を呪縛する闇をあぶり出す。

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[第25回]
佐世保小6女児同級生殺害事件

 昨年、神戸児童連続殺傷事件の元少年Aが出版した手記は大きな話題になった。その多くが手記の出版を批判するもので、元少年Aはその後週刊誌に直撃され再び姿を消した。

 一連の大騒動でもわかるように事件から18年がたった今でも、当時14歳だった元少年Aによる残忍な事件は人々の記憶に鮮明に残っているが、そんな元少年Aの事件から7年後に起こったのが「佐世保小6女児同級生殺害事件」だった。

 2004年6月1日、長崎県佐世保市の小学校での給食の時間、小学6年生の女児2人の姿が教室になかった。担当教師が不思議に思った直後、女児の1人、A子が血だらけになって戻ってきた。


「私じゃない。私じゃない」

 女児はそういいながら奥の教室を指差したという。教師が慌ててその教室に行くと、そこにはもう1人の女児・B子が血まみれで倒れていた。B子は同級生のA子に呼び出され、椅子に座らされ片手で目隠しされた上で、カッターナイフで殺害されていたのだ。

 駆けつけたほかの教師に、A子は「救急車を呼んで。B子が死んじゃう」「私、どうなっちゃうの」という言葉を発していたという。

 当時この事件は大きな波紋を呼んだ。加害者であるA子は当時11歳。元少年Aの14歳よりさらに3歳も幼い。しかも2人は周囲から“仲良し”と思われていた関係だった。また被害者の少女の父親が大手新聞記者であり、会見を開いて娘への思いを吐露したことでも世間の涙を誘った。そして多くの少年事件がそうであるように、関心は加害者女児の“動機”と“家庭環境”に焦点が当てられていく。

『思春期病棟の少女たち (草思社文庫)』