椎名林檎はやっぱり右傾化したのか? 問題だらけの五輪に協力する意図を探る
今夏、ブラジルで、リオデジャネイロオリンピックが開催される。その閉会式で行われる、東京オリンピックへの引き継ぎ式の検討メンバーが1月に発表され、歌手の椎名林檎がその1人に就任した。
就任にあたって椎名は、「東京、ひいては日本をよりよく紹介できるよう、検討メンバーの一員として探ってまいります」と述べている。2014年頃は、AKBが開会式に出演するなどという噂が騒がれるような東京オリンピックのありかたに対して、批判的な発言を重ねていた椎名だが、ここに来て、どういったオリンピック開会式を行うべきなのか、など言動に変化が見られていた。14年のNHKのサッカーワールドカップ公式テーマ曲に選ばれた『NIPPON』の歌詞などから、「椎名林檎はネトウヨ」「サブカル右翼」という声もネット上に出てきていた。彼女がオリンピックに一枚噛むということはどういうことか。過去の発言や専門家の分析から、椎名がオリンピックに協力する意図を探る。
■東京オリンピックで、J-POPの蓄積を海外に発信したい
椎名は東京オリンピックの開催式のありようについて積極的な発言を行ってきていた。14年末頃、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事である秋元康氏が、「JAPAN48」なるグループを結成し、東京オリンピックの開会式を飾るという噂が立っていたが、椎名は音楽ニュースサイト・ナタリーで次のように語っている。
「2020年の東京オリンピックが決まったとき、浮かれ気分もありながら、皆さん『だいじょぶなのか東京』と、不安を覚えたでしょう? 開会式の演出の内容がおっかなくて仕方ないでしょう?」
「せっかく他国から多くの人が日本に来てくださるわけですから。だって、昔から脈々と続く素晴らしいスポーツの祭典が東京で開催されるんですよ。(中略)J-POPと呼ばれるものを作っていい立場にあるその視点から、絶対に回避せねばならない方向性はどういうものか、毎日考えてます」
間接的にであれ、JAPAN48構想をあてこすっているともとれる発言をしていた。
また、同年11月にはNHKでも、写真家の蜷川実花と演出家・野田秀樹を相手に、東京オリンピックについて「外から見ている日本のカルチャーとのギャップを、ここへ来て相殺してゼロ地点というのを示したい」と述べていた。
こうした椎名の発言からは、「オリンピックを機に、J-POPの蓄積を海外に発信したい」という意図が感じられる。
12年のロンドンオリンピックの開会式では、アンダーワールドが音楽監督を務め、ペット・ショップ・ボーイズやビージーズの曲が使われた。イギリス選手団が入場する際にはデヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」が流れ、最後はポール・マッカートニーが式典を締めくくるという、イギリスのポピュラー音楽が持つ蓄積をフルに活用したものであった。
椎名が、ロンドンオリンピックに負けない開会式を行いたい、と思っても不思議ではない。
■デヴィッド・ボウイもナチにかぶれていた時期があった
だがしかし、椎名はなぜそこまでオリンピックにこだわるのか。そこには、彼女の「右翼性」「ファシズム志向」が絡んでいるのだろうか。
「右翼性」が言われるようになったのは、14年のアルバム『日出処』が出たのがきっかけだ。旭日旗を想起させるジャケットのデザインも相まって、一部で「椎名林檎の右傾化を表している」という意見が出る一方で、「ただのファッションに目くじらを立てるべきではない」という反論が沸き上がった。
同アルバムの収録曲で、NHKの14年度サッカー放送のテーマ音楽となった『NIPPON』の「万歳!万歳!万歳!日本晴れ」「この地球上で いちばん 混じり気の無い気高い青」といった歌詞は、サッカー応援に日本人が一丸となれ、というようなニュアンスが感じられ、ファッショか右翼か、とも思わせる。実際、この曲に対してはさまざまな見方が存在する。