ビーチ沿いのリゾートホテルを改装した学校

10年後の英語の価値とは? フィリピン留学から考える、グローバル化と語学習得の意味

2016/01/31 16:00
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QQイングリッシュ・シーフロント校のプールと中庭

 日本が寒さで縮んでいた1月中旬、私は陽光きらめくフィリピン・セブにある英語学校に体験入学した。昨年末、新聞社を定年退社した60歳。還暦過ぎの英語に改善の余地があるかどうかを試してみたいと考えたのだが、期間はわずか5日間。その成果を測るよりむしろ、最近評判のセブ留学の実情を垣間見て、この国の直面する課題やグローバル化時代の英語について考える機会を得たことが有意義だった。

■年間2万人の日本人がフィリピンに留学

 フィリピンの公用語はフィリピノ語(タガログ語に近い)と英語である。多くの英語人口を抱え、300とも500ともいわれる外国人向け英語学校がある。主流は2000年ごろから立地を始めた韓国系だ。フィリピンに対するマイナスイメージも日本ほど強くないため、米豪などより経済的、効率的に英語が学べるという実利主義から当地でのビジネスモデルを確立し、年間10万人の韓国人が英語を学ぶ。

 英語を習うならネイティブからという「ブランド志向」の強い日本勢のフィリピン進出は遅れたが、10年ごろから価格の安さをウリにオンライン英会話を始める業者が現れた。スカイプで結ぶ限り、日本人が気にする治安も衛生面も問題はない。その後、韓国系の学校を買収するなどして日系の英語学校も徐々に増え、留学フェアも東京などで盛んになった。最近では年間2万人の日本人が留学で訪れる。

■セブ留学の5日間は駅前留学の160日分に相当


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QQイングリッシュITパーク校の内部。オンライン授業を行うブースが並ぶ

 私は日系最大手のQQイングリッシュのお世話になった。セブの中心部にあるITパークと、ビーチで有名なマクタンにそれぞれ校舎を持つ。私はマクタンのリゾートホテルを改装したシーフロント校で学んだ。

 授業は午前9時から午後6時まで、昼食を挟んで50分ずつの計8コマ。うち6つはマンツーマンで2つがグループレッスン(生徒は2~3人)。午後7時と8時にも自由参加の夜間授業が毎晩開講される。終日の授業はきつかった。マンツーマンだと時間の半分はしゃべらざるを得ないし、睡魔にも襲われる。

 受講者の半数以上は日本人。老夫婦や毎年来るという年配者もいたが、多くは若者だ。教師らによると、日本人の生徒はおしなべて礼儀正しくシャイという。初心者でも臆することなくしゃべるロシア人、台湾人や韓国人の果敢さに比べ、確かにおとなしい。外国に出ると、日本人同士で固まる傾向が、より強くなるようにもみえた。そうした特性を考えると、多くの授業がマンツーマンのセブ留学は、日本人の初心者に合っているようだ。英米豪に留学し、ESL(英語が母国語でない学生のために設けられた英語プログラム)などで10人以上のクラスの授業を受けても、おとなしいと発言する機会は限られるだろう。実際、米加豪に留学する前にここで学ぶ若者も多かった。

 ちなみにQQイングリッシュのオーナーの藤岡頼光氏によると、セブ留学の5日間は、駅前留学の160日分に相当する時間、英語で会話するという。QQの特色は、留学とともにオンライン授業もやっていることだ。受講者はまずオンラインで学び、まとまった時間が取れたらセブに来て集中レッスンを受け、帰国後も同じ教師からオンラインで受講できる。教師は学校で教える合間にオンラインで教える。料金は1週間食事込みで10万円、1カ月で20万円ほどだ。

これからの英語教育 フィリピン発・英語学習法 (Edu-Talkシリーズ4)