メリー氏は「キレる老人」? 80〜90代高齢経営者が陥る「感情の暴走・自己顕示」の病
「真っ向から否定したり、ダメ出ししては絶対にいけません。高齢者はプライドがすべてです。自尊心が傷つけられたと感じた途端、水風船に針を刺したように感情が噴出してしまう。そのため、まずは言っていること、主張することをとことん聞いて認めましょう。医療従事者も多く実践している『イエス(Yes)・バット(But)法』です。『雲は黒い』など、絶対おかしいと思うことを言っていても、とことん認めます。一般に、高齢になるほど、自分を認めてくれて、自分が認めた相手の言うことしか聞く耳を持たなくなります。そうやって、ご本人がようやく、『じゃあお前の言うことを聞いてやろうか』という風になってから初めて、『そうですよね、雨雲は黒いですけど、晴天の日は白くないでしょうか』と、こちらの意見を言いましょう。それで『何を言ってるんだ、雲は黒い』と言うのであれば、自分の存在がまだ認められていないということ。再び肯定していきましょう」
新しい意見を述べることも、間違ったことすら指摘できない……こうなると、高齢経営者とうまく仕事をしていくことは不可能のように思えてくる。
「ビジネスで成功してきた人は、損得感情に長けています。ご本人が言うことを実行した場合のデメリットを『このような結果になります』と、具体的に挙げると耳を傾ける場合も少なくない。ただ、ワンマン経営者の場合は、周囲にイエスマンしかいないことが多いため、自己否定されることに慣れてないし、意見を言える人もいない。そこに加齢が加わり、暴走に歯止めがかからなくなるのです」
では、一度こじれた関係を修復することはできないのだろうか?
「一般に、高齢になると、物事の『曖昧さ』が許せなくなる傾向が強まります。白か黒しかありません。『こいつは敵だ!』と判断したら、徹底的に追い込むので、関係を修復するのは難しい。しかし、白だと言ったのに次の日には黒だと言うのも高齢者のもう一つの傾向なので、一発逆転もなきにしもありません」
“キレた”ように激昂する高齢者が増加している要因として、新郷氏は最後にこう語る。
「時代の流れが早すぎるのが大罪かと思います。昔はせいぜい早歩きくらいのスピードで時代と並走できていたのに、今はその流れが新幹線や飛行機並みになっている。かつては価値観や常識も自己修正できたが、いまの時代は修正が追いつかない。現役感が強い高齢者はそうしたもどかしさが腹ただしく、余計にいら立つのでしょう」