2015年お騒がせのオンナたち

藤原紀香、前田敦子、熊切あさ美――「梨園」線上に浮かんだオンナたちの採点簿

2015/12/29 19:00

前田敦子、熊切あさ美、藤原紀香――およそ共通点のない女3人が、同時期に「梨園」に引き寄せられた2015年。彼女たちは、歌舞伎役者と梨園の関係性においてどう立ち回ったのか? エッセイスト・高山真がひもとく。

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紀香をエスタブリッシュ認定とするほど日本は甘くないんやで~

 2015年は、いつも以上に「梨園と女性芸能人」の関係が取り沙汰された年だったように思います。藤原紀香・熊切あさ美と片岡愛之助、そして前田敦子と尾上松也。3人の女性芸能人たちは「梨園」に入るのか否か。そんなボーダーライン上での攻防は、一般人がやや「うへえ」と感じてしまうほどに、芸能マスコミを騒がせたものです。

「梨園」という言葉に、何を感じるか。「伝統文化」「オーセンティック」「エスタブリッシュ」という側面を強く感じるか、それとも、「直系の息子たちやりたい放題」「女遊び」といった側面の方か。ざっくり分けると、歌舞伎を見に行ったり役者たちを応援するなどして「歌舞伎にお金を使う」人は、前者の言葉にうなずく場合が多いのでしょう。筆者は、歌舞伎は時々見に行くものの、「血統より才能や実力で看板役者を選べばいいのに」と思っている分、「やりたい放題」にはケッと思っているクチです。

 この原稿を書こうと思った数日前、「女性自身」(光文社)にて、いまや中村橋之助の妻として梨園の誰もが高く評価しているという、三田寛子のインタビュー記事が掲載されていました。内容は、夫・橋之助と3人の息子、合計4人の同時襲名披露の準備の様子と、「梨園の妻であること」を語ったものです。12月16日の段階ではYahoo!ニュースでもまだ読めましたが、まあこれが凄まじい。ざっくり要約すると「自分の仕事は全て夫のため。公の場でシャンとした姿であることも、『三田寛子』ではなく『歌舞伎役者の妻』としての顔」というもの。これを読んだ瞬間、誰もが「藤原紀香の未来は、本人が予想するほど明るくはない」と思うはずです。

◎紀香と愛之助の「自分ラブ」志向
 紀香がmisonoの上位互換であることが知れ渡って、もうどのくらいたったのでしょう。「ウチがウチが」感の強さにおいて、紀香はmisonoといい勝負。ただ、顔とガタイがmisonoよりはるかに一般人離れしている分(それが芸能の世界では「お金」を生むのですが)、紀香の押し出しの強さはよけいに際立ちます。そこに、「エスタブリッシュへの傾倒」まで加わったここ数年、やんごとなきデザインのワンピースなど着てチャリティ活動をする様子も含め、紀香の「こういう生き方をしている私」度は、天井知らずの高騰を続けています。


 はあ、返す返すも15年近く前、『昔の男』(TBS系)というドラマで、紀香に「仕事では、顔と体だけを便利使いされている女」の役を演じさせ、「ドラマの主演女優」という体裁だけは守る代わりに、思いつく限りの不幸や災難を味わわせていた脚本家・内館牧子の慧眼にはうならざるをえません。そして、それに潰されなかったばかりか、「ウチがウチが」感をより強めていった紀香にも、良くも悪くも感心するばかり。「芸能人ってのは『自分が主役』と誰よりも強く思いこめる人でないと残れない」との思いも強くなるばかりです。

 愛之助が、その愛称「ラブリン」に負けず劣らず「自分ラブ」な性格であることも、すでに広く知れ渡りました。工場経営の親御さんから生まれ、歌舞伎界に入ってノシていった、自分ラブな愛之助。そして、『クイズ!紳助くん』(朝日放送)上がり(本人談。関西テレビ『藤原紀香の1ボトル』という番組にて)の、自分ラブな紀香。「双子か」と思ってしまうほどに、自己愛のありようや方向性が似ています。ついでに言えば、激写されたデート場面の、衝撃的なまでに昭和感あふれるふたりのファッションもすごかった。一般人はすでに、やや引き笑いの状態。もう何もかもが浮世離れしています。恋人として見た場合の相性は最高でしょう。

『自分に酔う人、酔わない人 (PHP新書)』