「エンフォルドで母になる」! 「VERY」の大胆な特集名に見た“売れ続ける”理由
■読者のセンスを信じる誌面づくり
今月の巻頭特集は、「エンフォルドで母になり、ドゥーズィエムで私になる!」。こうもデカデカとブランド名を出されると、もうこのブランドは「VERY」のもの、もしくは「VERY」を読んでいる妻や母のものという気すらしてしまいます。そう掲げても傲慢にはならないという自負心が、今の「VERY」にはあるようです。
誌面を見ても、読者のシーン別着こなし紹介から、ドゥーズィエムのシャツに合うメイクの提案まで盛りだくさんで、ブランドが協力を惜しんでいないことが伝わってくることから、ブランド自体が、「『VERY』にだったら、『VERY』のものといったイメージをつけてもらってもいい」と考えているのではないか……と思います。
「VERY」の強みは、二子玉川といった街の名前やブランド名、「イケダン」をはじめとする造語など、言葉のイメージを雑誌に引き寄せ、自身のブランディング化を成功させている点ではないでしょうか。冒頭に書きましたが、「東京カレンダー」も自覚的ではないにしろ、女性のライフスタイルをエリア別で見せるというのは、こうした「VERY」のブランディング化に影響を受けているのだと思ったのです。
また「VERY」が読者の支持を得ながら、長年にわたり売れ続けているのは、読者のセンスを信頼しているからとも考えられます。この巻頭特集が企画された背景も、「都内で読者調査をすると、1グループに一人はドゥーズィエムクラスのお洋服を着ている」からであり、また「母行事で何を着た?と質問すれば、数人に一人はエンフォルド、と答えが返って」きたからなんだとか。
そんな調査結果に、インパクトのあるタイトルをつけ、かっこよく仕上げる。世間には、ターゲットのことを「市場なんて、こんなもんだろう。大衆なんて、これくらいで喜ぶだろう」とみくびることによって、なかなか業績が上がらないといった事例は数多くありますが、「VERY」が今も好調な理由はやはり、「読者をみくびらないこと」なのではないかと感じました。
(芹沢芳子)