カルチャー
[連載]ここがヘンだよ子育て本!

セレブママ・滝沢眞規子が、「同じ主婦/ママ」として読者のもとに“降りてきた”ことが生む悲劇

2015/12/13 16:00

■サクセスストーリーにおける“不器用”は最高のスパイス

 「『ある日突然スカウトされてモデルになった、ママのシンデレラストーリー』ではなく、不器用ながらいつも目一杯の頑張りで自ら扉を開いてきた歩みがあったこと。そして、実は結構サバサバしていて男前な一面もある彼女の素顔が垣間見える、ロングインタビュー」というのは、インタビューのトビラ(表紙的なページ)に書かれた一文。そして「急にモデルの仕事をすることになって、不器用なところもあるから、例えばお手伝いさんとか、もっと人の手を借りる方法もあると思ったけど、そうはしない。常に母親業が最優先。すごいなって思います」とはタキマキさんを評した夫の言葉です。

 「普通」に並び、この「不器用」も、タキマキさんを表す重要な言葉のようです。モデルになることは乗り気ではなかったけれど、やるからには「モデルっぽくしなきゃとなんだか焦っていたんです。この体形ではヤバイと思うようになり、無理に走ったりして体調を崩してしまい生理も止まってしまって。その後にバーっと顔に吹き出物ができて」と、決して順調なモデルライフではなかったと振り返ります。どうやら「不器用」は「努力」という意味に置き換えられている模様。「最初からなんでもできたわけではなく、一生懸命努力してこの生活を手に入れたんですよ」を「不器用」という言葉に匂わせる。それは一般人への配慮であり、読者との数少ない共感性をつむぐ大事な糸口なのです。恵まれた体格ではないが努力で横綱までのし上がったというストーリー(※んなことないと思うのですけど)が、主婦相手の商売には必要なのだとタキマキさんは教えてくれます。「自分不器用っすから」度は★8つ。

■希望と絶望を与えることで信者を獲得

 結婚して専業主婦になったことを「家庭に就職」と表現するタキマキさん。そして「不器用」ながら一生懸命家事に取り組んだ日々を、「あの頃の時間があってやっと母親になれる女性になれた気がしています」と振り返っています。誰でも母親になれるわけじゃない……こんな一言に、家の中で日々自信を失いつつある主婦たちは感涙することでしょう。プレッシャーでしかない、「このキッチンで毎日私が作る料理はごくごく普通のごはん。それでも子供たちは世界一おいしい!と言ってくれます。お母さんの味は一生忘れられないものだと思うと責任重大」という一文も、タキマキさんにとっては主婦の価値を引き上げようとする配慮の一つ。

 そして「“主婦って楽しい”と言い切り、家庭でのひとつひとつのことに手間を惜しまない姿勢は、ともすると単調でつまらないと思われがちな主婦業が、有意義で楽しい仕事であることを教えてくれます」という一文に、「VERY」という雑誌の本音も垣間見えるのです。単調でつまらない主婦業も、やり方見せ方次第で富を生み出すコンテンツとなること。「VERY」もタキマキさんも、主婦/ママという単なる役割からカネを生み出す現代の錬金術師なのです。

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