角川慶子の「シロウトで保育園作りました」第100回記念対談(前編)

角川慶子×小阪有花「キャンセル待ち人気園でも2園目を出せない、ビジネスとしての保育園の限界」

2015/11/21 16:00
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■保育園は、いいビジネスじゃない

――「ウィズママ保育園」は2015年4月に正式オープン。その前のプレオープンも含めると、もうすぐ1年ということになりますね。これまでトラブルはなかったですか?

小阪 大きいトラブルはないですね。細かいトラブルはありますが。

角川 これから保育園事業を広げることは、考えていますか?

小阪 そうですね。でも、始める前から「私は、子どものことにしか頭を使いたくない」と言い切るくらい、経営的な目線は甘っちょろくて。展開していくのは理想ですけど、保育園は決していいビジネスではないんですよね。


角川 そう、そうなんですよね!

小阪 広さに対する子どもの人数が決まってるし。だから、「どんどん展開していきましょう」というのは簡単なことではない。熱意や方向が合う人とじゃないと、手を組めないし。

角川 東京都だと「認可外保育園は儲かる」と思って参入しても、潰れちゃう園が多いそうです。

小阪 角川さんの保育園は認可外ですか?

角川 認可外です、あえて。


小阪 うちも認可外。やはり、補助金をもらうことによって、国や都道府県による制限を受けたくないということですか?

角川 そうです。うちは、小学校受験にターゲットを合わせているので、それは認可ではできない。アクティビティに一流の先生を呼ぶことも、認可の保育料を考えたらできないので、あえて認可外です。

――保育園がいいビジネスでなければ新規参入も見込めず、結果としてなかなか待機児童問題は解消しませんよね。問題は、どこにあると思いますか?

小阪 保育補助として働いていたとき、面接でいくつかの園に行きましたが、「こんな狭い空間に、こんなに多くの子どもを詰め込んでいるのか!」と不安に思ったところもありました。認可外の園は、良い・悪いの差が激しい。

角川 私は監査対策業務もしているので、ほかの認可外も見ることがあるんですが、はちゃめちゃなところはありますね。子ども用トイレがなくて、大人用トイレに補助便座つけてたり。質の悪い認可外があることも、ビジネスにつながらない理由なのかなと思います。一般に悪いイメージがついてしまっていて、避けられてしまう。

小阪 悪い事件が起きるとすぐにメディアに取り上げられるけど、いいことは「当たり前」としてなかなか伝わらない。だから、悪いイメージがついてしまうことも。「認可外だからこそできることを」という園もあるから、認可外=悪い園と思うのはやめてほしいですね。

角川 うちは都内で数少ない成功している認可外だということで、世田谷区の議員さんが視察に来られて、「同じビジネスモデルで、世田谷に一園作りませんか」と言われたんですが、お断りしました。地域によってどこにターゲットを合わせるかは変わりますから、同じ園を別の地域でそのまま作っても、成功するとは限らない。その難しさもある。

小阪 そうなんですよね。フランチャイズの話があっても、地域によって求めてる保育は違う。うちの園では、地域の交流を復活させたいと思い、近所の人たちが保育園の子どもたちに会いに来てくれる環境づくりを目指しています。地元の人に来ていただいているので、お金は発生しない。つまり、保育料は上げずに子どもたちのコミュニケーション能力を高めることができる。それは、千葉県市原市という土地柄だからこそできることかな、と。

角川 うちは高級住宅街向けの保育園。ほかの地域ではウケないことはわかっています。ニッチな世界ですよ。

小規模保育のつくりかた: 待機児童の解消に向けて