カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」11月10日号
なぜ女は自分の墓と葬式にこだわるのか――「婦人公論」から浮かび上がってきた切なすぎる理由
2015/11/08 16:00
しかしもっと穿った見方をすれば、お墓の本当の目的は“偉大なる映画監督”のためではなく、“死んでもなお夫を偉大なる映画監督としてこの世に残そうとする妻”なのかも。目立たぬよう後ろ側に刻まれた妻の名前に、強烈な意志を嗅ぎ取らざるをえません。そう、かつての権力者たちがその力を誇示するために古墳を建設したように……。
あの人は呼んであの人は呼ばないで、義理の母と同じ墓はイヤ、骨は故郷の海に撒いて、氷川きよしのCDを棺に入れて……「婦人公論」世代が葬式やお墓に並々ならぬ情熱を見せるのは、発酵した人間関係に縛られ、家族内の役割は更新されず、そこに異を唱える気力も体力も失った女たちがワガママを言える最後の場所だからなのではないでしょうか。葬式・墓を夢見ることで、今生のつらさ、やるせなさから逃れている。「お葬式に関してこだわりたいのはお花かしら。トルコキキョウや大輪のカサブランカ。音楽はやっぱり、大島の思い出の曲『戦場のメリークリスマス』が、ゆったりと流れていると素敵ですね」という小山の言葉に、葬式と墓が女に与える強大な力を見せつけられた思いです。
(西澤千央)
最終更新:2015/11/08 16:00