[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」8月7日号

「家族の絆」と「他人のはじまり」の狭間で揺れる、「婦人公論」きょうだい問題

2014/08/03 19:00
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「婦人公論」(中央公論新社)8月7日号

 今号の特集は「介護、相続、収入格差 きょうだいとモメないために」です。猛暑の折、これまた蒸し暑いテーマをもってきました。ジャパニーズ・モスト・フェイマス・ブラザーズといえば、演歌歌手の鳥羽一郎&山川豊ですが(※当社調べ)、そんな2人の知られざる素顔を暴露しているのが、特集内「芸能一家の女たち――城山美穂子 鳥羽一郎、山川豊の“兄弟船”は姉妹が支えて」です。

 “オヤジの~か~たみ~”でおなじみの「兄弟船」ですが、実際、鳥羽一&山川のお父様は90歳でご健在です。現在お父様と一緒に暮らしているのが4人きょうだいの末っ子である城山さん。しょっぱなから「頼りになる姉は近くにいるのですが、遠くにいる男きょうだいはいざというときには使えませんね(笑)」と厳しい評価。古い家の管理と父親の世話を妹に押しつけながら、「この家は残したい。リフォームして、いつでも帰ってこられるようにしよう」と軽~く言っちゃうようで、「なんで末っ子の私が実家に縛られなあかんの?」と不満に思うこともあったそうです。さらに2人の“たったひとりのおふくろさん”である母に対するマザコンぶりもすさまじく、4年前にお母様が亡くなったときは「帰りがけに、泣きながら母にキスしたり(鳥羽)」「『母さんの横で寝る』と離れようとしなかったり(山川)」。山積する現実を女に押し付けて、男はカッコよく港を出る。「私たちからすると、いざというとき、おいしいところは兄たちがザーッと持っていく(笑)」という城山さんの思いを知った後に聞く「兄弟船」は、きっと今までとは違った感慨がありそうです。

<トピックス>
◎芸能一家の女たち――城山美穂子 鳥羽一郎、山川豊の“兄弟船”は姉妹が支えて
◎石井ふく子 信用しながら安心できない身内ならではの難しさ
◎血を分けた兄と泥沼の裁判を続ける理由

■「家族の絆」という諸刃の剣

 鳥羽一&山川の名誉のために申し上げますと、実家への仕送りは欠かさず、旅先で珍しいものがあったら必ず送ってきてくれたりと、金銭面での援助はしっかりしてくれているそう。「もしお金の心配まで私がしなければならなかったら、こんな穏やかな気持ちではないでしょう」と城山さん。現在は、それぞれのきょうだいが持ち場でがんばろうということで落ち着いていると。めでたし、めでたし……。


 しかし、この特集に出てくるのは「相続」というお金があるが故に起こる人間不信、「介護」という親への愛と現実のせめぎ合い、そして「収入格差」という嫉妬や反発の源泉。決してめでたしめでたしとはいかない、いわゆる骨肉の争いです。家族でありながら「他人のはじまり」でもある「きょうだい」。そんなきょうだいだからこその難しさを、ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)のプロデューサー・石井ふく子は「信用しながら安心できない身内ならではの難しさ」と表現しています。

 石井自身、女優やタレントが経理やマネジメントを親やきょうだいに任せ、フタを開けてみたらお金がまったくなくなっていた……というような話をよく見聞きするようです。「信用しながら安心できない」というのは日本人が盲信してきた「親を大切にしよう」「きょうだいは仲良くしよう」という儒教的な道徳観念と、「他人のはじまり」という現実が複雑に絡み合ったがゆえの感覚ではないでしょうか。ちなみに新シリーズの『渡鬼』では岡倉大吉(故・宇津井健が演じていた父親役)の相続がテーマになるということ。「超リアルな問題だけに、いいかげんなつくりにはできません。さりとて、あんまりドロドロした世界にはしたくない」と石井。いやいや、ぜひドロドロしてください!

婦人公論 2014年 8/7号 [雑誌]