「ar」創刊20周年記念号、“内輪ネタと編集者アゲのどんちゃん騒ぎ”でいいの?
■こんなエディターがいたら嫌だ
「働く服をもっと可愛く!!」というページでは、職種別にオフィスでのコーディネートを紹介しています。こうした属性別のファッション提案は、ほかの女性誌ではよく見かけるのですが、ネアカ一辺倒の「ar」としては珍しい企画。
しかし、「働く雌ガール」の分類が、「事務職」「総合職」「企業広報」「美容師」「エディター」という謎な分け方。どう考えても「事務職」「総合職」のくくりが大きすぎるし、「企業広報」「美容師」「エディター」のくくりが小さすぎます。広報って事務系総合職じゃないの? 事務職でも総合職でもどっちでもいいような「エディター」を別枠にするのは、やはり「編集ってオシャレで楽しいよ」的な自己プロデュースの一環でしょうか。
紹介されてるコーディネートも実用性はまったくなく、いつものarテイスト。「事務職」が派手な花柄オールインワン姿で「目指せオフィスの華」とか、イメージだけで作られてる感じがします。「エディター」なんて「オシャレするのが仕事!」「トレンドは誰よりも先に」とのことで、肩出し+ヘソ出し+太もも丸出しのフリンジスカート姿、あるいはニットガウンの肩をはだけて白タンクトップ丸出しで口を半開き。そんなエディター見たことないです! 「オシャレするのが仕事!」じゃなくて、普通に仕事して! 「ar」読者は実用性は求めていないからこれでいいんですかね……?
■結局、インスタの方が参考になる!?
「ar girlのおしゃれスペック大調査」というページでは、ar誌面に登場するモデルや素人モデルが登場し、ファッションについて一問一答で語っています。その中の「おしゃれの参考にしているのは?」という問いに対して、14人中7人がインスタグラム、あるいはピンタレスト、ブログと回答していました。「人間観察」と回答した人も数名。今の時代らしい回答です。要するに、お手本は「一般人」なわけです。ここで「ar」と答えろとまでは言いませんが、せっかくここまで「雑誌って楽しいよ」「編集者ってオシャレだよ」とアゲアゲしてきたのに、結局参考にするのは「一般人」とは、急に現実に引き戻された感じに。
いわゆる“オシャレ感度が高い子”として誌面に紹介されている人がインスタを見ているなら、その“オシャレ感度が高い子”たちにあこがれている「ar」読者は“感度が低い子”なんでしょうか。はたまた、誌面に出ている、“オシャレ感度が高い子”のレベルが下がっていて、情報源がインスタくらいしかないのか。あるいは逆に、インスタも含めて若い子のレベルが全体的に上がっているのか……。
実用でもない、かといってモードでもない。ただ、オシャレという漠然としたイメージが広がっている「ar」のファッション特集。いまどきの若者のファッションへの姿勢をよく表しているようです。そして、あらためてファッション誌の役割について考えさせられたのでした。
(亀井百合子)