カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」9月22日号

作り置きのおかずに、帰り道のダッシュ……「婦人公論」の“トクする働き方”が女性を追い詰める!

2015/09/19 19:00
「婦人公論」9月22日号(中央公論新社)

 今月8日に安倍晋三首相の無投票再選が決まった自民党総裁選。意欲を示していたものの推薦人が集まらず、出馬を断念した野田聖子議員のインタビューから今号の「婦人公論」(中央公論新社)レビューを始めたいと思います。発売日が総裁選当日なのでその話題はありませんが、タイトルは「政治家である以上、私は総理大臣を目指します」。

 インタビューは、安全保障法制についての自身の考えから、少子化問題、そして女性政策まで。「政治の世界でも、女性議員の数は圧倒的に少ないうえ、ほとんどはキャリアのない人たちなので、仲間として打ち解けられるまでにはいかないのが実際のところです。女性が選挙に勝ち続けるのは大変なことなので、党や派閥の言うことを聞いていれば次の選挙にも勝てると勘違いしてしまう。でも、違うんですよ。いざというときは党ではなく、自分と一緒に戦ってくれる人たちしか頼りにならない」。安倍総理再選の際、最前列に女性議員をズラッと並べてお祝いしていたのが印象的でしたが、どこの世界も、女同士の争いにすり替えて問題の論点をボカそうとする手段は同じなんですね。未婚vs既婚、子ありvs子なし、幼稚園vs保育園といった小さな対立の向こうには、大きな思惑がうごめいているのかも……。

<トピックス>
◎野田聖子 政治家である以上、私は総理大臣を目指します
◎特集 いま、女性のトクする働き方
◎このまま卒業? “性”と“愛”

■甘やかされた家族ほど、頑張りを認めない

 今号の特集は「いま、女性のトクする働き方」です。野田氏が「安保法制より先にすべき」という女性政策。高齢社会となり、労働力が低下している今、眠れる働き手である主婦が社会に出て収入を得ることこそ、経済活性の糸口と言われていますが、ブランクあり、介護あり、経験なし……主婦の社会進出は、そんなに簡単なことではありません。リードでは「手に入れられるのはお金だけではありません。達成感や生きがい、新たな出会い……。これからの人生を輝かせるエッセンスが、働く現場には溢れています」との文言。単なる収入増だけではないと煽る「婦人公論」。

 しかし記事を読むと、はやる気持ちも一気にトーンダウン。女優・濱田マリの「奥さんでお母さんだからハードな現場にも立ち向かえる」。父がクリーニング店、母が美容室と両親がそれぞれの店を経営する家庭で育った濱田。「2人の間には契約があり、『仕事を続けるのは賛成だけど、家のこともちゃんとやってね』と、父が母に念を押していた」。そして「その言葉通り、美容師の仕事をしながら、家事も子育ても完璧にこなしていました」という濱田の母。そんな母にあこがれて、自身も結婚時に「『家のことは全部私がやります』と、宣言しちゃった(笑)」

 インタビューは全体的に“仕事があって家庭もあるからこそ両方頑張れる”という論調ですが、垣間見えてくるのは“仕事を持つ母親が抱える罪悪感との戦い”です。

「仕事が終わったら、絶対に寄り道をせずにダッシュで家に帰ること。たとえば、娘が学校から帰宅する5分後に家に帰れるスケジュールだったら、5分前に帰れるように全力で走る」
「『子どもが小さいうちにお母さんが働くのは可哀想』と思う方もいるでしょう。でも、私はそうは思いません。母親が働いていれば子どもに寂しい思いをさせることもあるし、お母さんが学校行事に行けなくて悲しい思いをさせることもある。でも、それも子どもにとっては貴重な経験です」

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