コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

藤原紀香、愛之助との交際宣言ブログから漏れ出た「私ってロイヤル」な自意識

2015/09/03 21:00

 その際、旧皇族や梨園育ちなど「女は苦労してなんぼ」が当然という、男と同じ世界に育った女性の嫁入りは、普通すぎて“選ばれた女”度合は低い。まったく関係のない世界から、それまで持っていた仕事や価値観をより多く“捨てる”方が、“望まれた女”“選ばれた女”度合は高まるのだ。男のために、これまでのキャリアを捨てるなんてもったいないと思う女性は、並程度の自意識の持ち主である。自分は特別で、優秀であるという強い自意識の持ち主こそ、捨てることに興奮を覚えて、躊躇がないのだ。

 紀香も早速“捨てる”ことを始めている。ブログでの「お相手が日本の伝統芸能を継ぐ方でもあり」発言は、交際宣言が遅くなった理由をファンに説明したものだが、紀香は男のために、ファンを“捨てた”のである。この不義理に紀香は、きっと満足していることだろう。なぜなら、ファンを裏切れることができるのは、紀香が“持っている女”の証明であり(ファンがいなければ、ファンは裏切れない)、ファンを裏切ることで、控えめな梨園妻という“選ばれた女”に近づくからである。

 “捨てる”と言えば、愛之助の元カノ・熊切あさ美も“捨てる”ことが好きである。8月30日放送の『旅ずきんちゃん』(TBS系)で、「彼氏がいるときは出歩かない。自分の人生を捧げたいと思ってしまう」と、自分を捨て、彼氏に尽くす性格であると発言したが、知名度も人気も強い後ろ盾(紀香の所属事務所は業界最強である)も持っていない熊切が、“捨てる”ことをしても、愛之助にとってメリットがないことに気づいていない(歌舞伎役者にとって一番のメリットは、切符をさばいてくれる人だろう)。

 恋愛は自分を捨てることと思っている熊切、自分が大好きだからこそ、自分を捨てることや特殊な世界に興奮を覚える紀香。男にとってはどちらもわかりやすいので、「意のままに動かせる、扱いやすい」という意味では、両方とも一緒である。

 血筋がモノをいう歌舞伎の世界で、一般家庭出身でありながら、二代目片岡秀太郎の養子となり、現在の地位まで上りつめた愛之助は、いろいろな意味で人心掌握に長けていることだろう。物腰の柔らかさは愛之助の魅力だが、外見とは裏腹に実はとんでもなく“悪いオトコ”なのかもしれない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。最新刊は『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2015/09/03 21:00
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