森進一直撃取材でわかった、『直撃LIVE グッディ!』が『ミヤネ屋』に勝てないワケ
フジテレビの亀山千広社長が、「午後のニュースを独り占めしている局がある」と、読売テレビ『情報ライブ ミヤネ屋』を名指しし、同番組に対抗すべくスタートさせた『直撃LIVE グッディ!』。しかし放送スタートから5カ月、まったく視聴率が伸びていない。3%を超えた日もあったが、基本的に2%台をウロウロ。1%なんて信じられない視聴率を記録したこともある。亀山社長は「夏休みが正念場」と低迷する『グッディ』をかばっていたが、夏休みに入っても視聴率は変わらない。
そんな中、信じられない珍事が起こった。8月7日、歌手・森進一の直撃取材だ。女性週刊誌が報じた「森と28歳年下の女性との交際報道」を受けて、『グッディ』取材班は、早朝から森の自宅を張り込んだ。彼の日課が、早朝のジョギングから始まるのは、芸能記者なら誰でも知っている。番組ディレクターは、自宅から出てきた森を直撃し、最終的には森も口を開いたものの、ほぼ無言の森に約1時間にわたって質問を続けた。
問題はここからだ。スタジオでVTRを見ていた出演者が、この取材方法に難色を示したのだ。まず司会の高橋克実が、「森さん、どうもすみませんでした」と謝罪し、キャスターの安藤優子も出演者も頭を下げた。高橋の「本当に、何をしてたんですか? この番組は」という発言に、コメンテーターとして出演していた土田晃之は、「本当に……クソみてえだな」と吐き捨て、さらに高橋が「取材は、朝の4時か5時ぐらいですか?」とスタッフに聞くと、土田が「迷惑だよ」とも。
安藤は「心臓がドキドキしちゃいました。申し訳なくて」と、まるで番組が犯罪でもおかしたかのような態度で、大村正樹キャスターも「直撃チームの中でも、本当に若手のディレクターなんですけども。本当に森さん、失礼いたしました。(森が交際をうわさされる女性と)ぜひ、うまくいっていただきたいなと思うんですけどね」とフォローしていた。
取材が素人のディレクターだったことは否めないし、「今は幸せいっぱいという形でよろしいんですかね?」「生活のどの辺に彩りが出ましたか?」といった質問内容もあまりに陳腐。編集もヘタだったように思う。取材陣側の「とりあえず取材できた」と自己満足が画面からにじみ出ていた。
しかし、森の口を開かせたディレクターの熱心さは、どんな取材にも必要なのだ。自分たちの番組の取材方法に問題があると思うなら、まず放送しちゃダメだし、それを批判するなら番組を降りればいい。番組批判は視聴者がすることで、出演者がすることではない。番組の総責任者が放送を決めたコーナーに出演する以上、批判はおかしいのではないだろうか。やはり『ミヤネ屋』だったら、もっとスマートに編集しただろうし、出演者も批判しなかっただろうと思う。
『ミヤネ屋』のスタッフが、「視聴者のニーズに合わないかもしれないけれど、戦後70年の節目ですから」と、視聴率を度外視して日米の激戦地・硫黄島から2時間の生中継をした8月14日、『ミヤネ屋』は通常より若干低めだが、視聴率7.8%を記録。一方で、『グッディ』は番組始まって以来の高視聴率3.8%を稼ぎ出したものの、やはり『ミヤネ屋』には勝てなかった。これは、目先の視聴率に躍らされないで、スタッフが信念を持って番組作りしているかどうかの差だろう。視聴者にもそれは伝わっているはずだ。これじゃあ『ミヤネ屋』に勝てる日は、来るはずもない。
石川敏男(いしかわ・としお)
昭和21年11月10日生まれ。東京都出身。『ザ・ワイド』(日本テレビ系)の芸能デスク兼芸能リポーターとして活躍、現在は読売テレビ『す・またん』に出演中。 松竹宣伝部、『女性セブン』(小学館)『週刊女性』(主婦と生活社)の芸能記者から芸能レポーターへと転身。