深田恭子という女にあこがれる「美人百花」の“がんばらない”特集がズレているワケ
■男目線で服を着る「美人百花」
「『夏のデート服』大質問会(はーと)」という特集も見ていきましょう。この特集では、ファッションのあらゆる分野に精通したプロの男性たちが、デートコース別の夏のデート服に対して“厳しめ”のチェックしてくれるとのこと。ちなみにプロの男性とは、ファッションエディターやスタイリスト、編集者などです。
なぜ“厳しめ”のチェックが必要かというと、誌面にも「特にカジュアル下手のみなさん必見」と書いてあるように、「美人百花」は昨今のカジュアルブームに乗り切れていないからでしょう。カジュアル一辺倒になってしまった「CLASSY.」(光文社)と同様に、フェミニンスタイルが中心の「美人百花」も、カジュアル化の波を無視できなくなっているのかもしれません。そこには、男性との夏デートはアクティブになるからカジュアルな服装が必要という“男ウケ”の価値観も垣間見えます。
さて、彼らからどんな厳しめチェックが入ってるのかというと、「アクティブなデートに決めすぎて来られると引いちゃう」「男はメンズ服にもあるシャツやスニーカーなど、なじみのあるアイテムを見ると安心する生き物」「個人的に可愛すぎるコーディネートが苦手」「“モテたい感”が出ている露出はNG」など、思っていたよりありがちなコメントばかり。
が、実はこの男性たちは、外見を見るとマッチョタイプ、遊び人タイプ、文化系タイプなどが入り乱れている状態で、女性の好みもバラバラの様子。どんな服装にも、好ましいと言う人とそうでないと言う人がいて、結果、無難なページになってしまったのではないかという気もしてしまいました。どこの層にモテたいのか、ふんわり漠然としているのも、「美人百花」っぽいのかもしれませんが……。
■がんばらないカジュアルが大問題!
深キョンは、時代に逆行して「節制する」と言っていますが、やはり時代は「がんばらない」のがトレンド。ということで、今月号の「VERY」(光文社)と同じように、「美人百花」でも「がんばりすぎない」特集が組まれていました。
「夏のレディは“がんばりすぎない”ファッションがオシャレ」と、無地Tシャツ、スニーカー、ぺたんこ靴、ガウチョ、デニムスカート、ゆるっとした羽織り、などが紹介されているのですが、そもそもフェミニンが好きな「美人百花」読者にとっては、こうしたアイテム自体に苦手意識を持ってしまうのではないでしょうか。同企画も、読者に向けてというより、単純に「昨今のオシャレがシンプルで飾り気のないものが主流だから」という理由で組まれたように思うのです。
フェミニンは、いまや間違えるとダサくもなりがちなスタイル。しかし、フェミニンが染みついてしまった「美人百花」の読者からすると、フェミニンであることの方が「がんばらない」ことであり、カジュアルな服を着ることこそ「がんばらないといけない」「無理しないといけないこと」だと思います。「がんばりすぎない」企画であるにもかかわらず、なんだかんだカジュアルをがんばってやってしまっているのです。ここに、この雑誌の矛盾が隠されているようで興味深く感じました。そしていつの時代も、男性に合わせることは「がんばらないといけないこと」であり、その点だけは変わらないのだなぁと気付かされました。
(柴朋美)