小島慶子が、母への葛藤を乗り越えて「いいお母さんです」と語るに至った理由とは?
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「いいお母さんです」小島慶子
『誰だって波瀾爆笑』(日本テレビ系、6月14日放送)
タレントの小島慶子といえば、「女子アナ嫌いの元女子アナ」であることに加え、「母親との関係に悩んだこと」でも知られている。
そんな経緯から、『あさイチ』(NHK)の「母が重たい問題」の回には常連ゲストと化している。小島は理論的に母親との葛藤を語るのだが、毒母持ちではないレギュラー陣(有働由美子アナ、井ノ原快彦、柳沢秀夫解説員)は全員が見事にピンときていないようだ。
唯一の女性である有働アナなら、小島の言う母との葛藤をわかってくれるかと思いきや、やはりまるで理解はできていないように見える。有働アナは『ウドウロク』(新潮社)の中で、母親はいつも自分の味方だと書いていた。落ち込んで夜中に電話をしても必ず出てくれ、その原因がたとえ有働アナにあっても、「由美子は悪くない」と励ましてくれたそうである。
一方、かつては同業だった小島の母は、小島の著書『解縛:しんどい親から自由になる』(同)によると、「あなたはいつ花が咲くの?(いつになったら売れるのかという意味)」と言ったり、番組を見て的外れな感想を長々と送ってきたりと、頑張っている小島を疲弊させる。
この2つの例で比べると、褒める有働アナの母は“いい母”で、罵る小島の母は“毒母”と解釈されるだろう。けれど、そう簡単に白黒つけられるほど、問題は単純でない気がする。
あえて乱暴な言い方をするが、全ての母親は“毒母”のスイッチを持っているのはないだろうか。何かの拍子で“毒母”のスイッチが入ると、小島の母のようになり、何もきっかけがなければ、有働アナの母のように優しい母でいられる。そのきっかけは、自分の人生に満足していない母親が、その分娘に成功を求めてしまうことに関係するのではないだろうか。娘が成功していれば、よくやった、頑張ったと褒めることができるが、そうでないときは“毒母”スイッチが作動して、罵る。娘はますます自信をなくして、成果を上げることができず、母はさらに娘を罵り続ける。つまり、有働アナは母に“成功”と認められた一方、小島は母に“成功”と認められなかった、という違いしかないのではないだろうか。