「男性ヘルパーはかわいがられてナンボ」おばあちゃんからの視線が重い介護士
民間有識者からなる「日本創成会議」がまとめた提言が反響を呼んでいる。東京圏では高齢者が急増し、深刻な医療・介護サービス不足が起きるとして、高齢者の地方移住をすすめているからだ。高齢者だけ移住されても困る、と地方からの反発も強いし、そう簡単に高齢者が地方に移住するとも思えない。となると、ますます進行する超高齢化社会を逆手に取るしかない。元気な老人が介護を必要とする老人を介護するのだ。体力が足りない部分は、ロボットスーツなどをフル活用する。元気な老人の生きがい創出にもなるし。どうだろう?
<登場人物プロフィール>
熊谷 祐介(23)介護士として、関西のデイサービスで働く。両親、妹との4人家族
■介護スタッフはみんな満身創痍
熊谷さんは介護士としてデイサービスに勤務して2年目。私立4年制大学を卒業してすぐ介護の世界に入った。大学時代の専攻は経済学で、福祉にはまったく縁のなかった熊谷さんが介護に興味を持ったのは、就職活動を始めてかなり時間がたってからだった。
「初めはサービス業を希望して就活していたのですが、なかなか決まらず、4年の冬近くなってから介護業界を考え始めました。人と接する仕事がしたかったし、おばあちゃん子だったので、お年寄りと接する介護もいいんじゃないかと思ったんです」
志望を介護業界に絞ると就活はスムーズに進み、すぐに数社から内定をもらえたという。現在勤務しているデイサービスは、介護業界には比較的新しく参入した中堅企業が運営していて、同期も50人ほどいるという。それもほとんどが熊谷さんのように、介護や福祉とは無関係の学部出身だ。
熊谷さんの勤務するデイサービスのスタッフは10人程度。熊谷さんが一番若い。
「人間関係は悪くないですよ。男性スタッフはリハビリ担当の方を入れても3人なので、先輩たちにもかわいがってもらっています。うちの会社は辞める人はそう多くなくて、これまでに辞めた同期は2~3人。デイサービスではパートさんが2人ですね。同期は『介護は向いてない』と辞めましたが、パートさんはみんな腰痛がひどいのが辞めた理由です」
「スタッフは満身創痍」という熊谷さんだが、彼自身も腰と膝の痛みがひどく、通院しながら仕事を続けている。
「女性の利用者さんは小柄な方がほとんどなので、トイレ介助でも、片手で体を支えて、もう片手でズボンを下ろすこともできます。でも脳梗塞で体が不自由になった60代の男性など、体も大きくて重いので、とても1人では介助できません。若い僕でも大変なんだから、女性スタッフにはもっときついだろうと思います。僕はまだ介護技術が先輩方に比べて劣っているので、せめて体を使う仕事は率先してやろうと思っています。でも入社半年で腰痛が出て、それから膝にもきました。コルセットははずせないし、休日は整体治療ですよ。それでも僕が頑張れば、体を壊して辞めるスタッフが減ると思う。仲間だから、辞めてほしくないんです」