カルチャー
久世番子×曽根愛の「女子の洋服」対談

男ウケ、女ウケ、実家ウケ……久世番子×曽根愛の「ファッションは誰のため?」対談

2015/06/07 19:00
『神は細部に宿るのよ』4(C)久世番子/講談社

――従来のルミネの広告は尾形真理子さんの紡ぎ出すキャッチコピーが秀逸で女性に支持されてきましたが、「試着室で思い出したら本当の恋だと思う」のように、なぜ毎回服と恋愛要素を絡めなきゃいけないのかという疑問も覚えます。

久世 ルミネは客層が若いからでしょうが、少女漫画に「とりあえず恋愛要素入れとけ」ってなるのと同じなのかも。

曽根 確かに。私は佐々木倫子さんの漫画、特に『動物のお医者さん』(白泉社)がすごく好きだったんですけど、特に面白いのが、恋愛の要素がゼロなところなんですよ。本来の少女漫画のセオリーなら菱沼をハムテルと二階堂が奪い合うはずなのに、そんなことはなく楽しい毎日が過ぎていく。菱沼も大好きな服を毎日着て、自分の為のオシャレをしているんです。だから、雑誌や商業施設が売れるからという理由で恋愛要素をなんとしてでも絡めたがる展開が嫌な気持ち、私はよくわかりますね。瞬間的なモテとか流行じゃなく、もっと長く人生をともに歩むくらいのイメージで心地いい服を選んでいきたい。

――今後、歳を重ねた時、してみたいファッションはありますか?

曽根 私は、健康のためのファッションですね。昔はオシャレ目的だった巻き物も、いまは首を冷やさないために巻いてますし、足首も体が冷えるから出したくない。「大動脈を冷やすな!」が合言葉で。オシャレは我慢っていうけれど、もう我慢はできません(笑)。

久世 そういう意味では、最近はファッション業界全体がやさしくなっていますよね。ペタンコシューズや、ゴムウェストのパンツ、スウェットスーツに、ブラトップまで市民権を得て、これから年を重ねたり病気になっても、“オシャレ”というものにしがみつけるのかもしれないっていう希望が生まれました。

曽根 腹巻きもカワイイのがありますしね(笑)。そういえば、久世さんも、お洒落なおばあちゃんのエピソードを描かれていましたね。

久世 はい。ただ、そのオチは少し絶望的で(笑)。実は私が描いたあのおばあさま、若い頃パリに住んでいただけじゃなく、キャリアウーマンな上に、お父様は芸術家なんですよ。そりゃ、お年をめしてもお洒落だろ! と(笑)。どうやら年をとったからっていきなりセンスがよくなるわけではなさそうです。でも、まあ、あこがれますよね!

曽根 若い人に「ああいう年寄りになりたいな」と思われるような人になりたいな。

久世 ん……? もしかして、それも“モテ”?

曽根 あ! 男モテ、お母さんモテの先にある…“若者モテ”だ! いつまでたっても、無意識のうちにモテたがってるってこと!? 

久世 最後に気付いてしまいました(笑)
(取材・文=城リユア)

久世番子(くぜ・ばんこ)
漫画家。1977年愛知県生まれ。代表作に『神は細部に宿るのよ』(講談社)1~4巻。ほか、『パレス・メイヂ』(白泉社)を連載中。

曽根愛(そね・あい)
イラストレーター。1976年生まれ。セツ・モードセミナー卒業。主に書籍や雑誌の挿絵で活躍中。装画、挿絵の仕事に「チア男子!」「食の職」など。『着ていく服が見つからない』(KADOKAWA)で初めて漫画に挑戦。2作目『そろそろ実家を離れたい』(同)も発売中。

最終更新:2015/06/07 19:00
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