カルチャー
久世番子×曽根愛の「女子の洋服」対談

男ウケ、女ウケ、実家ウケ……久世番子×曽根愛の「ファッションは誰のため?」対談

2015/06/07 19:00
『着ていく服が見つからない』(KADOKAWA)(C)曽根愛

(前編はこちら)

――久世さんの編集担当で元ファッション誌編集部にいたSさん(以下、編集S)も今日同席してくださってますけど、雑誌を作る側として“モテ”をどう捉えていましたか?

編集S 私は以前「ViVi」(講談社)を作っていたんですけど、あまりモテは意識していませんでしたね。それこそ、純粋に“着たい物を着る”“楽しいから着る”っていうスタンスで。確かに15年くらい前までは「ViVi」もモテ系雑誌だったんですけど、途中モデルが入れ替わったこともあり、方向性は一転。男性目線を除外することがプライド、みたいなところがありました。

久世番子氏(以下、久世) そういえば私、エビちゃん(蛯原友里)たちが出ていた全盛時代の「CanCam」(小学館)や、読モ全盛期の「JJ」(光文社)を昔よく読んでいましたよ。読み物としては面白いんだけど……、あのモテファッションをテキストとして使っていた方々は、三十路越えてあのままのスタンスだと、いまつらいんじゃないかな。

――「CanCam」のお姉さん雑誌「AneCan」では、高垣麗子やエビちゃんが結婚特集で語っている一方、もえちゃん(押切もえ)は連載ページで神社に行ったりしているようです。モテ路線の雑誌で頑張り続ける姿がどこかつらそうに映ります。

久世 「CanCam」時代のもえちゃんしか私は知りませんが、同じように歳を重ねて「もえちゃん頑張れ!」と応援している人はいると思いますよ。雑誌って、金太郎アメみたいに似通った人ばかりじゃなく、いろんな人がいた方が面白いですよね。

曽根愛氏(以下、曽根) 確かに。ところで、最近の10代や20代前半の子はモテとか意識するんでしょうかね?

編集S 今はやっている、若い子向けのファッション誌は、そこまで“モテ”は意識してないように感じます。 例えば「LARME」(徳間書店)なんかは、完全に女子が好きな世界観。あの「ゆめかわいい」とか「病みかわいい」雰囲気は、男子が一番嫌いなやつじゃないですか?

久世 確かに、「自分の王国を確立した服」は男性からしたら扱いにくさを感じるかもしれないファッションだよね。女子アナファッションとは対局に位置する。でもさ、実際、いまどき主張しない女性なんてほとんどいなくないですか?

曽根 そうなんですよね、“主張しない擬態”に惹かれて女性と結婚し、結婚後に壮絶な主張をされて弱り果てる男性をなんとなく想像してしまいます。

久世 ただ、そんな男性たちを私たちも笑えないんです。「靴先が尖っている男性はああだ」とか、「ストールを巻いている男性はこうだ」とか、「オシャレすぎる眼鏡ってどうよ」とか、男性を服で選り分けているのは女性も同じだから。

曽根 私、男の人でオシャレな人ってスキがない感じがして苦手なんですよ、って言い出すと、結局自分も女子アナファション好きの男性と同じことをしてることになるんですよね。だから、女子のモテ服も、それに惹かれる男性のこともそんなに批判できないです。投げたボールがそのまま自分に返ってくるから。ならば、どうせなら「人の目を気にせず、自分が好きな服を楽しく着るのが一番いいんじゃないか」と、悩みの20代後半を越えて、たどりついたのが今です。

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