ココナッツオイル、なぜヒットした?若者・中高年を魅了する「全方位的ブーム」の裏側

2015/06/13 19:00

■ダイエットや認知症予防……専門家が国内市場を啓蒙
 日本の市場では長らくオリーブオイル、亜麻仁油、セサミ油といったオイル健康法が定着していたこともあり、ココナッツオイルはアメリカほど馴染みのある食材ではないにもかかわらず、すんなりと受け入れられた。若い世代にはスキンケアやヘアケア、ダイエットと美容のための万能オイルとして、また、中年以上の層には認知症予防・改善のためのブレインフードとして受け入れられ、全方位的に訴求効果が高かったためだとされる。

 医師による科学的な根拠を伴ったことで、さらに信憑性を増し、白澤卓二・順天堂大学大学院教授は著書『認知症は脳のメタボだった!』(宝島社)の中で、認知症予防の救世主は中鎖脂肪酸だとし、ココナッツオイル&ミルクは認知症の改善・予防に役立つと述べている。それ以外にも多くの医師たちがココナッツオイルを生活に取り入れることに賛同し、昨今の生姜やアサイーを筆頭にしたビルベリー、チアシードなど高機能食材ブームの中でもココナッツオイルはユニークな存在感を示している。

 どんなによいものでも供給が追いつかなければヒット商品とは成り難い。ココナッツオイルの場合はフィリピン、インドネシア、インド、ベトナムなどが伝統的に栽培、抽出しており、その製造工程や輸出体勢が盤石であったこともよかった点である。

 品質においても、最上品はエキストラヴァージンココナッツオイルとなるが、国内で販売されているものはどれも品質が保証されているものが多いようである。生産国第1位のフィリピンにいたっては政府機関にココナッツ庁があり、生産者に対し技術支援を行い、品質管理を徹底させているという。

■ブームで終わらない可能性
 消費者側が安全性を見極め、数種類のうちから選択しなければならないようなら、波及効果は弱まるだろうし、販路も一般的な流通をたどれないだろう。特にコントロールが難しい天然の素材は、マーケットが玉石混交となりやすく、成分名だけがひとり歩きし、そのためブームが失速してしまうことはよくある。もっとも、前出の『THE COCONUT OIL MIRACLE(ココナッツオイル健康法)』によると、水素添加されているものでなければ、精製・脱臭・脱色加工したココナッツオイルであっても「ココナッツオイルに含まれる脂肪酸は製造過程で傷むことはないので、健康的な食用油であることには変わらない」とのことである。


 認知症やダイエットだけでなく、口腔ケアや殺菌効果もあるとされ、その切り口が語りつくせないほど豊富なココナッツオイル。ココナッツウォーターは飲料各社からすでに製品化されているが、今年2月、日清オイリオグループ株式会社から「日清エキストラバージンココナッツオイル」が発売となった。15年、ココナッツオイルがより身近になることは間違いないだろう。
(庄司真希)

最終更新:2015/06/13 19:00
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印象操作ひとつでブームになるなんてもはや陰謀!