“ジュースクレンズ”ブームの落とし穴「ビタミン全てを賄えない」「免疫力低下も」
――必要な栄養素が不足すると、どのようなデメリットが考えられますか?
浅尾 まず、基礎代謝を下回るエネルギー(カロリー)摂取を続けると代謝が下がり、低体温やダルさなどの原因になります。栄養素でいうと、炭水化物の不足が続くと仕事の効率が下がりますし、たんぱく質が不足すると体のさまざまなところに悪影響を及ぼします。例えば、免疫力が落ちやすくなって風邪をひいたり、アレルギー反応を引き起こしやすくなったりすることもあります。コラーゲン生成についても、たんぱく質とビタミンCが必要なように、健康がベースで成り立つはずの“美”にも、悪影響が及んでしまいます。
ただ、いずれにしても栄養素の不足がある程度習慣化した場合のことなので、数日で急に症状が現れるものではありません。コールドプレスジュースは高価なので、一般的には1週間それだけで過ごすケースなどは少ないかもしれませんね。
――では、ダイエットや美肌、デトックスといった効果は見込めないのですか?
浅尾 通常の食事よりも摂取エネルギー(カロリー)が低くなることで、ダイエット効果はあると思います。日ごろから脂質などを摂りすぎている現代の私たちにとっては、胃腸のリセット効果はあるのではないでしょうか。ただ、体脂肪を減らすには1キロ当たり7,000キロカロリーの消費が必要という計算になります。そのため、1~2日くらいのプチ断食では、排泄されて体重が減る程度で、痩せる(体脂肪を減らす)というほどにはならないと考えています。
――これからジュースクレンズを行いたい人へ向けて、事前や事後の注意点があれば教えてください。
浅尾 専門家がついて断食を行うパターンとは違って栄養管理がおろそかになってしまうため、頻繁に、長期間行うことはオススメできません。健康な方が1カ月に1回、2日程度を行う分には支障がないと思います。ジュースクレンズの後は、焼き肉などの脂質が多い食事を避け、消化のいいものをよくかんで食べるところから始めてください。また、ジュースだけでは必要な栄養素全てを摂取することができないので、日ごろの食事内容にも配慮することが大切です。
――以上を踏まえ、「ジュースクレンズ」ブームについて、どのような印象をお持ちですか?
浅尾 健康な方が短期間続ける分にはいいですが、長期はオススメできません。1~2日ほど実施することで、腸内がすっきりしたり、食べ過ぎで重たく感じた体がすっきりしたりといった効果を得るのはかまわないと思います。チアシードなど話題のスーパーフードを含め、コールドプレスジュースも人の体に万能の栄養素を持っているものではないので、それを理解した上で、補填的、複合的に取り入れることが上手な活用方法だと、私は思っています。
最近のダイエット事情から、“野菜やスパイスなどの天然素材を摂ることで健康や美容につなげる”のは、スーパーフードなどの流行も含めて、時流であると思います。サプリメントやダイエット食品を愛用する理論派の方と、野菜やナッツ、自然素材を愛用するナチュラル志向の方とに、二分されているのではないでしょうか。
(文・構成=千葉こころ)
浅尾貴子(あさお・たかこ)
管理栄養士歴19年。食べ物のカロリーや栄養バランスに関するアドバイス、美容や健康のアドバイザー、女性誌やコラムの執筆者として活躍中。著書に『女子栄養大学 あさおたかこ先生の一生太らない朝ごはん』(マキノ出版)など。All About「食事 ダイエット」ガイドも務める。