サイゾーウーマンカルチャー漫画レビュー宝塚マンガを超えて響く『淡島百景』 カルチャー 『なんかおもしろいマンガ』あります ~女子マンガ月報~【5月】 宝塚マンガを超えて響く『淡島百景』、女子歌劇学校に渦巻くあこがれと憎悪に見える先 2015/05/23 19:00 『なんかおもしろいマンガ』あります 【雑誌】リニューアル後の「Kiss」が読み飛ばしを許さない充実のラインナップ 「Kiss」(講談社) 昨年の10月号に「ぷち・リニューアル」と題して大幅なページ数のアップに踏み切った「Kiss」(講談社)が絶好調です。ページ数を増やしたことで個別の作品の質は下がってしまうのではないかと少々不安に思っていましたが、さにあらず。むしろハイクオリティな連載ばかりが増えて、1ページたりとも読み飛ばすことができないスリリングな雑誌になりました。 メインを張るのは東村アキコ先生の『東京タラレバ娘』と海野つなみ先生の『逃げるは恥だが役に立つ』、そして志村貴子先生の『こいいじ』です。いずれも今さらご紹介するまでもない話題作ですが、この3作品以外にも、二ノ宮知子先生『七つ屋志のぶの宝石匣』、ドラマ化が決まった小沢真理先生『銀のスプーン』、小川彌生先生『銀盤騎士』、河内遙先生『涙雨とセレナーデ』、アキヤマ香先生『長閑の庭』などなど、強力な連載作品がずらりと並んでおります。そしてショート作品も伊藤理佐先生の長寿連載『おいピータン!!』や久世番子先生『神は細部に宿るのよ』、柘植文先生『野田ともうします。』といった隙のない布陣。ちなみに東村先生はもう1作、『海月姫』も同誌で連載してますね。 わたしが毎号楽しみにしているのはベテラン、こやまゆかり先生の『バラ色の聖戦』とひうらさとる先生の『ホタルノヒカリSP』です。あらすじを知らなくても楽しめてしまう1話1話の完成度の高さ、次号への強烈な引き、そして極上のエンタテインメント性は、雑誌でマンガを読むことの醍醐味を存分に味あわせてくれます。 平凡な主婦だった真琴が、夫の浮気を機に自我と美に目覚め、モデルとして羽ばたいていくさまを描く『バラ色の聖戦』は、単行本も既に16巻までが発売中です。現在発売中の「Kiss」6月号に掲載された真琴の元夫のエピソードがまた壮絶でして、率直申し上げて大映ドラマに比肩する面白さであります。 『ホタルノヒカリSP』はご存知『ホタルノヒカリ』のスピンオフ作品です。が、もはや完全に独自の世界を確立しており、前作をご存知ない方でも存分に楽しめることでしょう。主人公はなんとジャ○オタ女子。あるあるネタ満載で、サイゾーウーマンをご覧のみなさんともシンクロ率が高いのではないでしょうか。ちなみにタイトルの「SP」は「エスピー」と読み、「真空パック」の略です。 現在発売中の6月号では、姉妹誌の「ハツキス」から出張掲載されている沖田×華先生の『透明なゆりかご ~産婦人科院 看護師見習い日記』に涙いたしました。単行本第1巻も絶賛発売中ですので(品切れ店続出のようです)、ぜひお読みください。 小田真琴(おだ・まこと) 女子マンガ研究家。1977年生まれ。男。片思いしていた女子と共通の話題が欲しかったから……という不純な理由で少女マンガを読み始めるものの、いつの間にやらどっぷりはまって、ついには仕事にしてしまった。自宅の1室に本棚14竿を押しこみ、ほぼマンガ専用の書庫にしている。「SPUR」(集英社)にて「マンガの中の私たち」、「婦人画報」(ハースト婦人画報社)にて「小田真琴の現代コミック考」連載中。 前のページ12 最終更新:2015/08/28 15:17 関連記事 なぜ、東村アキコのマンガは人の心を打つ? 読者を問う『かくかくしかじか』の強度『マリーマリーマリー』が描く、“足りない”“不完全”でも幸せな2人による幸福論少女たちの自立を描く『娘の家出』――“伝統的な家族”の枠外にある家族の感情 根拠ない自信と希望的観測の“ドリーマー男”をめぐる、女たちの来し方と行く末宝塚・アイドルへの祝福にあふれる『かげきしょうじょ!』、今こそ読むべき名作の予感 次の記事 『テッド』DVDプレゼント >