[女性誌速攻レビュー]「CLASSY.」6月号

「CLASSY.」が、かわいさ全開の「ar」のおフェロ顔を全否定!

2015/05/11 21:00

 美人だけどサバサバしていて、強気だけど恋には不器用。そんなバブルコントとしてのイイ女の根源が浅野温子にあるとすれば、「CLASSY.」のイイ女は仕事より恋に走る、情熱的でちょっぴり計算高いイメージ。しかし今号の着回し企画「5大デイリーブランドの名品シャツで5月の着回しDiary」の主人公は完全にそれを裏切ります。料理本編集部に勤める29歳で、大学時代の先輩と交際10年目、とくれば結婚に向けて軍師官兵衛ばりの策略を練ろうというものですが、「最近彼が、趣味の域を超えたトライアスロンに夢中で放っておかれ気味……」と嘆くのみ。彼が大事なデートにトライアスロンのガチな装備でやって来た怒りも、仕事とスイーツにすり替えます。さらに「手料理と楽しいおしゃべりで、すっかり元気! 二次会のカラオケはなぜか80年代縛り? よし、じゃあヒムロック!」。今日びの29歳はヒムロックって言わないだろ! 「CLASSY.」女子の高齢化は以前のレビューでもお伝えした通りですが、恋に結婚に情熱的ばかりではいられない現実が浮き彫りとなる特集でございました。

■30代男性は「ar」読者(20代)が大好きという事実

 そんな“かわいいだけじゃいられない”「CLASSY.」を痛感させられたのが、「CLASSY.世代は“脱可愛い顔”が一番モテるんです」。女性誌「ar」(主婦と生活社)でいうところの「おフェロ顔」(うるうるしてツヤツヤしてテカテカしたムンムンフェイス)がいまや街にあふれていますが、「CLASSY.」は「目はパッチリ、頬はピンク、ぷっくりしたリップ……もしかして未だに可愛い顔を目指していませんか? それ、完全に時代錯誤!」と可愛いフェイスを一刀両断。

 可愛いメイクに向けられたヘアメイクアップアーティストのコメントが辛辣で、「目を大きく見せようとして、アイラインを黒でしっかり太く引いたり、囲み目にしたり…。あまりに魂が込められていて怖いです」「ほんのりとした艶のある唇は男も好きだけど、不自然なほどテカテカしているグロスは狙っている感じがしてもはや可愛くない」「淡いピンクのチークを真ん丸に入れるのは、ちょっと子供っぽい。もっとアラサーに似合うチークの色、塗るテクニックがあります」。男はテッカテカのツッヤツヤのじゅっるじゅるならなんでもいいという言説にストップがかけられます。

 そこで「CLASSY.」が提唱するのが「年相応のハンサム顔」。クールとまでは言わなくても、アイラインよりアイシャドウ、チークは斜めに、眉は髪より暗い色。ただ元々かわいらしい読者がモデルになっているので、劇的なビフォーアフターにならないのが企画としては玉にキズ。しかし「CLASSY.」の、“可愛い”とも“じゅっるじゅる”とも違ぇから!! という決意表明は受け取りました。


 メイクが「年相応」なら、ヘアはどうでしょう。「どっちが好き? 真実のモテヘア選手権」は、「無造作風ヘアならどっち?」「前髪ならどっち?」と「100人の男のコ」にアンケートを取ったというもの。男性アンケートとは、まさに神の裁き。髪だけに。こなれ重視の「CLASSY.」が推しに推しているボサボサ風のモデルヘアが、「毛先まできちんと巻かれたふんわりとしたミックスカール」に67%対33%という大差で敗れるという大番狂わせが! 「無造作風ヘアというより、ただのボサボサヘアに見えます」(25歳・公務員)、「起き抜けでそのままコンビニに行くような雰囲気が嫌です」(24歳・マスコミ勤務)など、ほら、「CLASSY.」読者が狙う男性陣は“作り込まれた無造作感”なんてこれっぽっちもわかってないんですよ! ということは“年相応のハンサム顔=モテ”の方程式も微妙ですわな……。

 「CLASSY.」が新しいモテを提唱する→男性本音座談会(もしくはアンケート)が全否定、という「CLASSY.」伝統の一人相撲が際立った今号。“イイ女でありたい”と“モテたい”の間には、暗くて深い川が横たわっているよう。これを“モテ三途の川”と命名して、今号のレビューはお開きとさせていただきます。
(西澤千央)

最終更新:2015/05/11 21:00
CLASSY.(クラッシィ) 2015年 06 月号 [雑誌]
光文社のいう「ハンサム」ってだいたい危険なワード……