[連載]ここがヘンだよ子育て本!

ご神木に抱きついたり、聖水を浴びたり……妊娠・出産すら頑張り過すぎちゃう高島彩

2015/05/03 21:00

 流産のショックから半年、「『やれることはやってみよう』精神で、冷えないからだつくりも実践。靴下、レギンス、レッグウォーマーを身に着け、時間があると半身浴や足湯をしてとにかく下半身を温めるように心がけていたし、毛細血管を強くするポリフェノールが豊富なアズキ茶を飲んだり、お料理にショウガを使ったり。妊娠初期の女性に勧められている葉酸も、このころからサプリで飲んでいました」と、“妊娠によいと言われているもの”を片っ端から試したという高島。

 それでもダメだったときは「気分をリフレッシュするために旅行にも行きました」。しかしここでも「頑張る高島」が顔をのぞかせます。「せっかく行くなら、とその土地のパワースポットを調べて子宝祈願へ」。高島が妊活中に訪れたパワースポットが写真つきで紹介されているのですが、これがスゴイ。ご神木を拝んだり、抱きついたり、聖水を浴びたり……パワーの受け取り方が“エモーショナル”。ご神木に抱きついたら「原因不明の41度の高熱を出した」というので、おそらくご神木パワーと高島パワーが激しく交差したのでしょう。「ご来光は地球を温める太陽のエネルギーを一身に感じることができる圧倒的なもの」「空気も薄く厳しい状況の中、体の内側から不思議な力が湧き出てきて、『もっともっと』と登り進んでいけた」など、この連載おなじみ“地球規模のなにかを感じる”発言もしっかりと飛び出していました。パワースポットをしのぐ高島パワーにナチュラル志向度は★8つ。

 そして、本書で地味にズッシリときたのは「女/母なるものへの過度な信頼」でした。これはもう「信仰」と呼んでもいいのかもしれません。お墓参りに行けば「女性のご先祖様と私のこの子宮は、つながっているんだなぁ」と思い、バースプランも「出産の痛みは全て経験したい」「(夫が)仕事で来られない間に一人頑張るのも大和撫子らしくていいな、と思っています」と、“女なら~耐えられる~痛み(痛み~)なのでしょう”を語る、マイネイームイズウーマン高島。実際の出産でも「出産という戦いに一人で挑んでこそ私は母になるのだ。そんな思いが強くなり、主人には早く到着しても生まれる瞬間までは分娩室に入らないようにお願いした」のだそうです。立ち会う気マンマンだった北川の立場……。

 「子どもを育てるのは母性的なこと」という思想もそう、夫に家事をさせることへの謝罪もそう、手作り味噌、あずきを煮るところから作る水ようかんなど、さりげなく香らせる“ていねいな暮らし”もそう、高島の中にある「女/母なるもの」という思い込みに近い理想像の大きさたるや。「仕事、どうする?」というコラムでの「私が思い描く理想の女性は今も昔もやっぱり母だから」「“お母さん”は代えがききませんものね」、こんな言葉にも、壮大な母性信仰を感じます。ご先祖様と子宮で会話し、「女の戦場」である出産において「一人で挑んでこそ私は母になるのだ」と自分を奮い立たせる。女である自分への底知れぬ期待が、ちょっぴり恐ろしいほど。というわけで、自分大好き度は★8つ。

 全ての人に好かれることを宿命づけられた人気アナ“アヤパン”という生き方。持ち前の努力と根性でその像を築き上げてきた高島だからこそ、妊活も頑張り、各方面への配慮も頑張り、誰もが羨むようなオシャレでナチュラルなライフスタイルも頑張り、夫を立てつつ女の尊厳を高めることも頑張ることができるのではないでしょうか。頑張りすぎて「茶オリ」に「茶色っぽいおりもの」という注釈まで入れたり、ご神木抱いて風邪ひいたりもしていましたが、これこそ“頑張りーズハイ”。


 ただ、これらは「頑張っている自分」を栄養素としてさらに頑張れる高島ならではの自主トレ法であり、普通の人間がマネをしたら大変危険なことになりそう。母という“教祖誕生”に共感できる人にはオススメの1冊かも。
(西澤千央)

最終更新:2015/06/24 12:51
高島彩 彩日記-Birth-
「頑張ってる自分」にうっとりしてるヤツに付ける薬はない