「おとなのOlive」が鮮やかに描き出した、“自分の好きをみつける”「Olive」のメッセージ
■モテよりも“1人を自分が愛せればいい”、それが「Olive」
最後に、来場者からの質疑応答タイムに突入! 「当時は、ほかの女性誌を意識したことはありましたか?」と質問されると、「ほとんどなかったですね」と大森さんは即答。「ただ、編集長の机の上には常に『mc Sister』や『non‐no』が置いてあったので、多分、どこかしらからプレッシャーはあったんだと思います。こういう雑誌が今売れているんだぞと。でもそれを編集長がスタッフに強要することもなくて、私たちを守ってくださっていたのでしょう」と振り返る。近田さんも、「ほかの女性誌と比べた『Olive』の立ち位置とかも、興味なかったよね。そんな世間知らずっぷりもよかったよね」と同意した。
自らの立ち位置に鈍感だった2人に代わり、中島編集長は「Olive」が俗に“非モテ”と呼ばれていることを指摘。コラムニストのジェーン・スーさんがラジオで発言した「『Olive』は男の子に媚びたりモテるより楽しいことがあると教えてくれたけれども、それを信じて大きくなった私は、男の子にモテなくなってしまった」というコメントを紹介すると、大森さんが大きく頷く一場面も。
「その通りです。男子より女子にモテたい。モテよりも“たった1人を自分が愛せればいい”というのが『Olive』だと思うし、私自身もそう」(大森)
参加者からは、今後の雑誌作りについての質問も飛び出た。「現代の雑誌は『Olive』と違ってマーケティング重視の傾向が強いと話されていましたが、これからどんな雑誌を作っていきたいですか?」と。
これには中島編集長が「私も日々悩んでいる……」としながらも、「やっぱり私はカタログみたいな雑誌を読んで育った子は、大きくなってもカタログしか作れないと思っていて。私たちは小さい頃から『リセエンヌって何なの!?』とキャーキャー騒ぎながら育ったので、そのメンタリティを雑誌を通して下の世代に伝えていかなきゃと思います。ちょっと前までは、すごくカタログ的で付録のある雑誌が売れていましたよね、でも今はちょっと変わってきた。カタログ要素はどんどんWEBに流れているし、WEBでできることはどんどんWEBでやるといいと思うのですが、そうなると、本当に紙じゃなきゃできない企画を組んでいる雑誌が支持され残っていくと感じています」と回答。
例えば、実際に「おとなのオリーブ」のスタイリングのような格好を明日していったら、おそらく電車の中で居心地が悪いわけだ。しかし目指すのは、そんな実用的な企画ではない。「写真を見て『わぁ、素敵!』と胸が高鳴り、イメージが膨らむ感覚を読者に喚起できる雑誌を作りたいんです」と熱い。「面白い雑誌って、単なる“情報”じゃなく、なんだかすごく多面的なイメージやあこがれや哲学や知恵を、時空を超えて伝えてくれるものだと思うから」近田さんも続けた。伝説の雑誌の作り手たちが語る言葉は、きっと雑誌の未来を照らす灯だ。そして数年後、思い出した頃に「おとなのオリーブ」を読み返し、そこに丁寧に込められたメッセージを受け取れば、うれしい発見があるのかもしれない。
(取材・文=城リユア)