イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】

『お兄ちゃん、ガチャ』、野島伸司がジャニーズ枠で描いた“アイドルと消費者”の関係性とは

2015/04/09 16:00

 正直、お兄ちゃんのキャラ設定が濃すぎて、岸以外の俳優の個性は埋もれてしまった感があるが、これは、お兄ちゃんたちが使い捨てにされる入れ替え可能な存在であることを強調するためだろう。それが一番現れているのが、蛇崩ナツコに従う5人の「お兄ちゃんズ」(仲田拡輝、吉澤閑也、梶山朝日、原嘉孝、目黒蓮)だ。ミュージカル風に描かれるお兄ちゃんズの姿はバカバカしいが、どこか哀しい。

 やがて後半になると、絶対に逆らうことができず、無条件にミコたち“妹”を愛することが宿命付けられているお兄ちゃんたちの悲哀が際立ってくる。逆にミコは、結構あっさりとお兄ちゃんたちを処分してしまう。子どもの残酷さを通して鏡に映った視聴者の姿を見せつけられているようで、結構ブラックな描写である。最終話ではミコ、ナツコ、四葉の3人とお兄ちゃんの関係がマルチエンディングのように描かれる。

 トイは前世で実の妹だった四葉と契約することで本当の兄妹となり、トイからミコの記憶は完全に失われる。その後、ミコは海外から帰ってきた父親が持っていたカプセルから生まれた新しいお兄ちゃんと契約する。一方、お兄ちゃんズをキープし続けたナツコは、いざ1人を選ぼうとすると、全員から拒絶される。実の兄となると会社の跡継ぎとなるために、ナツコの両親が自分たちを受け入れないだろうと思ったからだ。その代わり、恋人ができるまではナツコを見守ると、お兄ちゃんズは宣言する。

 結果的に、今までお兄ちゃんたちを商品として消費していたミコとナツコが、お兄ちゃんたちに捨てられる形となるのだ。面白いのは、お兄ちゃんズ同士に仲間意識が芽生え、ガチャを作った博士(西原純)の助手だったお兄ちゃんのレイ(宮近海斗)は、博士と一緒に暮らすことを選択するということだ。このあたりはBL的で、サブエピソードながらも印象的だ。もしかしたら野島自身、今まで『高校教師』(TBS系)等で描いてきた男と女の純愛を信じることができなくなってきているのかもしれない。

 『お兄ちゃん、ガチャ』は、ジャニーズアイドルの登竜門となってきたドラマ枠の最後を飾るにふさわしい、お兄ちゃん(アイドル)と消費者の関係を描いた問題作だったと言えよう。
(成馬零一)


最終更新:2015/04/09 16:00
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