カルチャー
蒼井凜花インタビュー

CA、モデル、クラブママ――女社会のドロドロを見続けた官能作家が語る“女同士”の性

2015/03/04 16:00

“セックス”をテーマの1つに小説を執筆している女性作家たち。彼女たちは男や恋愛、セックスに対して、人よりも強い思い入れ、時に疑問やわだかまりを抱えていることも。小説にして吐き出さずにはいられなかった、女性作家の思いを、過去の恋愛や作品の話とともに聞く。

【第5回】
蒼井凜花/『美人モデルはスッチー 枕営業の夜』(二見書房)
CAとモデルの二足のわらじを履いていた絵里。本格的にモデルに転身するが、そこで待っていたのは、カメラマンからのセクハラや、テレビ局の有力幹部への枕営業の日々。事務所の後輩でありライバルの優奈に触発され、ますます芸能界の“夜”の世界に没入していくのだが……。

――蒼井さんは、“異色の経歴”を持つ官能小説家として知られています。

蒼井凜花氏(以下、蒼井) 20歳から4年間CA(キャビンアテンダント)の仕事をした後、芸能事務所のオスカープロモーションに所属してモデルをしていました。モデル活動と並行してクラブで働き始めて、どうにかナンバー1になりまして、系列店を任せていただくことになり、その店のママになりました。その後、若さや容姿で勝負する夜の仕事に限界を感じ始めていた2008年に、手に職をつけたいと、サンケイスポーツ主催の「官能小説・性ノンフィクションの書き方講座」を受けたことがきっかけで小説を書き始め、10年に『夜間飛行』(二見書房)でデビューしました。ちょうど私がCAをしていた頃、「CAの売春組織がある」といううわさが立っていて、そのことを書いたんです。

――蒼井さんの作品には、“女の花形職業”と呼ばれる仕事に就く女たちのドロドロした世界が描かれていますよね。やはり実体験からのエピソードが多いのでしょうか?

蒼井 そうですね。みなさんに、こういう世界があることを知ってほしいという思いがあり、書いています。楽しんでいただきつつ、知らない世界の有益な情報をお伝えしたい(笑)。でも実際は、もっとドロドロしているんですよ(笑)。CA時代、上空で先輩に「今すぐ降りて」と言われたり、「アンタなんかキャビンのゴミよ」と罵倒されたこともありますし、ホステスをしていたときには、ホストを取り合って女性同士がつかみ合いのケンカをしているところもよく見ましたよ。

――そういった世界の女性たちは、“勝ち負け”の意識が強いのかなという印象です。

蒼井 特に夜のクラブでは、売り上げが“棒グラフ”で示されていたので、勝ったか負けたかが女性たちの基準になりやすかったというのもあります。それに、一度1位を取ると、落ちるのが怖いんですよ。1位だからこそ手にできていた権限も全て失ってしまいますし、お客さんから「今月、2位だったんだって」と煽られるので、勝ちたいという気持ちが強くなってくる。水面下で、枕営業をしている子もいたと思います。

 『美人モデルはスッチ―』(同)では、モデルの世界を描いていて、主人公の絵里は、“準ミス”という設定。実は私も、短大時代に、とあるミスコンで準ミスになったんです。そのような背景を元に、ミスになれなかったコンプレックスや、若さ・美貌・人気・学歴・収入などによる女性のマウンティングに加え、美に群がる男性との駆け引き、さらには自分の商品価値を高め、他者を利用し、確固たる地位を築こうとする男女の野望を描きたいと思いました。あまたの美女と接して感じたことは、美人はプライドが高い(笑)。そして美に固執しすぎるあまり歪んだ思考を持つ人、些細なことでも意外と心が折れやすい人も多いな、ということです。もちろん才色兼備で人からの信頼も厚く、幸福な人も大勢いますが、本の中でも書いたように「美しさイコール幸福」の方程式は成立しません。

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