社会意識が高まる「VERY」には異色!? 金は二の次&自己実現優先の働く主婦が登場
「VERY」も、以前のように「お金を稼ぐことは二の次で、自分が生き生きできる仕事をするのが一番」という時代ではなくなりました。それは、経済的に余裕がなくなったという理由よりは、昨今の「VERY」妻の問題意識が高くなってきていることに関係しています。現在の「VERY」妻の中には、お金を稼ぐことより他者貢献や社会貢献に重点を置く人の割合が多いと思います。その流れの中にあって、今月の「就活の花道」からは、サロネーゼ時代の「自尊心を満たす」意識に逆戻りしたように感じてしまいました。
■「VERY」と激化する社会問題
「VERY」の中で、社会的な事柄に対して問題意識が高いのは、小説の方かもしれません。辻村深月さんの「クローバーナイト」は、「ホカツの国」というサブタイトルがあるように、子どもを保育園に入れるための苦労が書かれています。
今月号は、主人公・裕が、偽装離婚をしてまで子どもを保育園に入れようとしている友人夫婦の姿を見て、「保活は今、激化する社会問題ですから、そろそろどこかの自治体から見せしめのように逮捕者が出ないとも限りません」と水を差します。
「VERY」はファッション誌なので、「激化する社会問題」を切り取ることが役目ではありませんが、なんとなく読者が気になっていることを取り上げていたら、知らず知らずのうちにそれが現在の社会問題となっていった……そんなことがありうるのが今の「VERY」なのかもしれません。そう考えると、ますます「就活の花道」に出てきたような「自己実現」を目指す働き方は、他者・社会貢献を意識する現在の傾向とリンクしていないような気がして、肩透かしのような気分になりました。
■「チームVERY」にモヤモヤするワケ
今月のファッションページも見ていきましょう。第1特集は「チームVERYの全部見せSpecial!」ということで、滝沢眞規子さんの「スタメンコート」「ロケの朝の“防寒テク”」、田丸麻紀さんの「ぺたんこ靴+ちょこっとヒール」「冬の鉄板デニムスタイル」などが“全部見せ”となっています。
ただ、いつものように「ママだって」とか「ママだから」などと、ファッションの裏付けを「ママ」でまとめ上げていないだけに、全体的にとっ散らかった印象に。確かにこの特集は、冬も終わりに近づいたものの寒さは増していく季節に、ママたちが困らないよう、実用的かつ、おしゃれに過ごすための知恵がたくさん詰まっているわけですが。それならば、「チームVERY」などという中途半端なくくりではなく、「ママたちの2月超え」などと、「ママがなぜ2月にこういう格好をしないといけないのか」という動機を感じさせてくれれば、読者に「VERY」妻であることの誇りを感じさせようとするコンセプトが見えたのではないかと思うのです。冒頭で伝えた通り、読者以外からも注目が集まる「VERY」。ますます求められるハードルが上がっているような気がしますが、今後はどんな特集が生まれるのでしょうか。
(芦沢芳子)