安藤美姫、ことごとく大炎上の理由――「ありがたがるはず」というお姫様脳の正体
しかしこの2人に、微妙な距離があることが気になった。安藤の現役時代の衣装を解説する際、友人は「安藤選手くらいのトップスケーターになると」というように、常に安藤を「立てる」のだ。実績が全てのスポーツの世界では、友人であっても「上下」が存在するということなのか。
安藤の「特別扱い」は、これに留まらない。安藤は服を買いに行く際、面倒くさいので、試着はいつも友人(トリノオリンピック、モーグルの日本代表)に頼み、取り置きを頼んで、半年後に行くそうだ。「スケーターになるわけに生まれてきたのではないから、女の子の部分の方が大事」と事あるごとに安藤は言うが、こんなわがままが通るのは、安藤が元世界王者のスケーターだからである。
姫である安藤のご威光は、スケートリンク内、もしくはそれに携わる関係者の間でのみ有効だが、安藤はそこに気付いていない。恋人と娘の写真を公開し、批判が殺到した際、安藤は「私のかわりに傷ついてしまう私の大切なファンの方もいます」として、批判コメントの自粛を依頼、子どもの顔を出したことについては「ファンの方と(中略)色々なことをシェアしたかったから」と説明したが、これこそが姫脳炸裂の瞬間である。
「私の大切なファンの方もいます」という発言は、「自分にはそれだけ熱狂的なファンがいる」と信じて疑わない様子がうかがえるし、「色々なことをシェアしたかったから」という発言の「シェアしたい」の本当の意味は、「私を褒めて」である。「外国人の彼氏イケメン! 子どもかわいい! ミキティ幸せそう! 素敵な写真をアップしてくれて、ありがとう!」みんなにそう言ってもらえると思って写真を公開したのに、思いもよらない批判に驚いているのだろう。
みんなが自分をありがたがるはず、という発想は、冒頭の「自分から話しかけることを心がけています」という言葉からも感じられる。安藤は現在、コーチ業の勉強中で、日本人に足りない表現力を伸ばすために、生徒に「自分から話しかける」のだそうだ。コーチに話しかけられたくらいで、表現力が伸びるのかは疑問だが、自分の言葉が、金言の価値があるという意識があることは確かである。
世界は自分のために回っている。そう信じられることは、アスリートとして大成するために、必要な資質である。そうでなければ、プレッシャーに負けて、大舞台で実力を出し切れないまま終わってしまうだろうし、実際、安藤はそれだけの結果を出してきた。スケーターとしての安藤美姫は、日本の宝である。
彼女の居場所は、テレビやSNSの中ではなく、スケートリンクの上なのではないだろうか。安藤が育てた、世界を狙える、表現力とジャンプに秀でた選手を早く見たいものだ。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
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