雑誌より読者の方がモテている? 虚しくこだまする「ar」の「Sexy Lady」という女性観
コラムニストの深澤真紀氏は、今の女性誌について、「今は、メディアと読者の距離が近づいてきてるから、(中略)姉目線・母目線になってしまってる」と語っています。しかし、「ar」は姉でも母でもなく、目線はフラット。読者と寸分狂わず、同じ立ち位置です。「最近カワイイだけじゃ物足りなくなってきた」「目指すべき次のステージは新しいLady」などと言いつつ、雑誌として新しい価値観を提案できていないのは、そこに原因があるようです。
■男はやっぱりカネ
アンケート結果を、さらにみていきましょう。「彼と付き合うキメテになったのは?」では、「1位性格」「2位趣味や話が合う」に続き、3位に「職業や学歴」がランクイン。さらに、「4位ルックス、スタイル」「5位経済力」と続きます。「デートの食事代はどうすることが多い?」では、「彼のおごり(68%)」「彼が多めに出す(14%)」「端数だけ出す(13%)」と、ウラヤマシイ結果に!
「胸キュンエピソード」では、「海外旅行中の彼が、誕生日にスカイプを通してバースデーケーキを用意してくれた」「誕生日プレゼントを忘れたと言われショックを受けていたら、駅のロッカーにしまっていたというサプライズ」「記念日の0時に『一刻も早くお祝いしたい』と彼がプレゼントを持ってきた」。「ザンネンだったデート」では、「クリスマスプレゼントが彼の歌が入ったCD」「彼が宿泊費を払ってくれると言ったのに財布を忘れた」「食事代もコンビニもプリクラも割り勘」と、記念日とカネに彩られたエピソードばかりが並んでいました。もしかして、雌ガールが好きなのは男じゃなくてカネでは……?
「今ドキ男子にモノ申す!」というコーナーでは、「もっと紳士的になってほしい。男なら男らしく!」「男女平等すぎな人が多い。もうちょっと男気が欲しい」「最終的にはこちらに決定権を委ねられるのが…物足りない」「女々しい人が多い」と男らしさを求める意見が目立ちました。総合すると、男は男らしく誕生日とクリスマスにはプレゼントを欠かさず、デートはおごりで! これ、ほとんど昭和から変わっていないですよね。「男に選ばれ、カネをかけてもらう=愛」という価値観の根深さを感じます。それはそれで1つの価値観として否定はしませんが、平成生まれの雌ガールが結局そこに落ち着くとは、オバサン筆者としては驚きました。
別の企画ページ「もれなくひとめぼれされるのはこんな子だ!」では、好きな男のタイプ別に“ひとめぼれされるファッション”を紹介しています。美容師や専門学校生は「カジュアルガール」、一般企業のサラリーマンや公務員は「キレイめシンプル」、クリエイターや広告代理店は「華やか&色っぽオンナ」と、タイプ分けがとんでもなく雑だし、そこから導き出される答えもステレオタイプ。この点においても、雌ガールが好きなのは男じゃないのでは? 好きなのはその先にあるカネでは? という疑惑が頭をよぎりました。男にひとめぼれされたいなら、もっと男を見なきゃ。
「おフェロ」「雌ガール」をはじめ、いつもコピーをこねくり回して、さも独自の概念のように提唱している「ar」。その実、編集部内には積極的に打ち出していきたい確固たる女性観はないし、読者も決して感受性豊かなわけではなく新しい世界を求めているわけでもないんだなあということがよくわかりました。真っ赤なほてりチークが急に色あせて見えた今月号でした。
(亀井百合子)