コラム
[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

「元気で若かった頃の自分にサヨーナラ」45歳の誕生日、老いより“死”が近づいてきた

2014/06/29 21:00
(C)安彦麻理絵

 45歳になった。なってしまった。

「ついに人生の半分まで来てしまった」と、なんだかしみじみそう思った。そして何故か、赤ん坊の時、自分がどうだったのか、目を閉じて、深くふかーく考えてしまった。「私、どっから来たんだろ?」とか、なんだかもう胎児レベルにまでさかのぼってみたりして。うちの母親いわく「アンタは予定日過ぎてもなかなか出てこなくて、結局2週間くらいたってから生まれた」のだそうである。ふぅん、である。0歳から44歳までの私の頭の中は、「生きること」とか「成長すること」で一杯だった。雑草がぐんぐん上に向かって伸びようとするみたいな、なんだかそういう感じだった。けれど。それが45歳になってみたら、これがどうしたわけか。誕生日の日に、私は何故か「死」について考えていた。

 人生の真ん中ぐらいまできてみて、初めて「あっ、自分はこれからどんどん枯れていくんだな」と思った。そして「毎日どんどん死に向かってるんだな」という実感がまざまざと湧いてきて、ちょっと怖くなった。44歳の誕生日の時には、考えてもみなかったこと。「今年の私は、去年とは違うわ♪」というフレーズが頭をよぎった。40歳過ぎた辺りから始まった私の「だるまさんがころんだ」。誕生日に「はっ」と振り返ると、「老い」ってヤツが、去年よりも一歩一歩近づいてきてる。けれどそれが、45歳の誕生日には違うキャラが近づいてきてた。新しいキャラ登場。振り返ったら、今までの「老い」ってヤツじゃなくて、なんとそこには、「死」が近づいてきてたわけである。

 「誕生日の日に、死について考えるなんて、一体どーいうこった」と、夫(年下)には言われた。確かに私も「どーいうこった」って思った。けど、別に「絶望的」になってるわけではないのだが。むしろ、新たな「第二の人生の始まり」に、ちょっとドキドキしてる自分がいる。0歳から44歳までの、私の人生の前編が終了した。で、これから、45歳からの後編が始まった、って感じだ。さて、どうする、私。

 とりあえず私は、44歳最後の日に「とにかく部屋の片付けをしよう!!」と思い立ち、自分の仕事部屋をダンシャリダンシャリ、しまくった。

 そんなわけで。私の新しい第二の人生は、男にとっては超ハタ迷惑な「女の開き直り」で始まったように思う。その日私は、なんだかどうも、夫がうっとうしくて仕方がなかった。夫に対して「昼メシくらい1人で食わせろ!!」とか「ニオイがイヤだ」「近づくな!!」といった、なんだか女性ホルモン絡みな、不穏な感情が湧いて出てきてたのである。「……もしや?」と、イヤな予感はしたのだが、そのまま何食わぬ顔で夕飯時にワインなんぞ飲んでたら。あっという間に見事に悪酔い。「あああっっ、もう死にたいっっ!! 死にたい死にたいっっっっ死にたい~~~っっ!!」と、シニタイを連発しながら号泣して、夫を激怒させ、子どもらを恐怖のどん底に叩き落としてしまった。で、翌朝。

 泣きはらして溺死体のようになった顔つきのままトイレに行ったら、あーあ、まったく。見事に生理がドカンと来てた。わかりやすすぎる。夫は「もう勘弁してくれ」と呆れ果てた。

「……なんとかならないの、それ」

 そんなふうにウンザリした顔をされ、私は今までのように、全身全霊をかけて落ち込む体勢に入った。が、しかし……45歳になった私は、落ち込まなかった。落ち込むのが心底バカバカしく思えたのである。今までだったら「ホントに申し訳ない……」と、ガックリ膝を落としていたのだが、それが45歳になった途端。クワっと白眼を見開いて夫に向かって一言。

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