サイゾーウーマン芸能テレビドラマレビューSMAP・香取の役者としての歪さ 芸能 イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】 『SMOKING GUN』――肉体&エロスを封印し、健全化されたSMAP・香取慎吾の歪さ 2014/05/26 21:00 SMAP香取慎吾ドラマレビューSMOKING GUN~決定的証拠~イケメンドラマ特捜部 ■エロスから始まり健全化していくグロテスクさ 『MONSTERS』(TBS系)、『幽かな彼女』(フジテレビ系)、『SMOKING GUN』と、近年の香取は科学者や教師など、頭の良さが要求される役柄を演じているが、どれも説得力に欠けるのは、やはり彼の武器は知性ではなく肉体であり、健康な明るさよりも、危険な色気にあるからではないだろうか。 90年代のSMAPはドラマ班とバラエティ班に分かれていた。バラエティ班だった香取は、ドラマ出演は地味な脇役が多かったのだが、野島伸司・脚本のドラマ『未成年』(TBS系)で、知能に障害を持つが、純粋な心を持つデクを演じたことで大きく注目されるようになった。その後、主演ドラマ『ドク』のベトナム人留学生、サイコサスペンス『紗粧妙子-最後の事件-』(ともにフジテレビ系)の猟奇殺人犯の少年、主演ドラマ『蘇る金狼』(日本テレビ系)で復讐のために銃器を操り、格闘を学ぶ朝倉哲也などを演じたのだが、どの役も幼さの残る甘いマスクと鍛えられた肉体の躍動感のギャップが魅力的で、韓流アイドルの先駆けとでも言うような存在だった。 しかし、香取の持つ肉体の色気はSMAPが国民的アイドルとなるに従って、封印されていく。分岐点は2000年にバラエティ番組で、慎吾ママを演じて、子ども人気が盛り上がった辺りだろうか。それ以降は『西遊記』(フジテレビ系)の孫悟空や、『こちら葛飾区亀有交番前派出所』(TBS系)の両津勘吉など、子ども向け作品の健全なキャラクターや普通の人を演じることが増えていった。当時よく出演していた三谷幸喜のコメディドラマでは、その健全さがうまくハマっていたが、『新選組!』(NHK)以降は、三谷が民放の連続ドラマから撤退してしまったため、こちらの可能性は閉ざされてしまった。 先日、三谷が2016年に再び大河ドラマ『真田丸』(NHK)を手がけるというニュースが報じられたが、その主演は堺雅人だとうわさされている。あくまでうわさ段階だが、ここで主演候補に、今まで三谷と蜜月だった香取の名前がまったく出ずに、『新選組!』で脇役を演じていた堺の名前が浮上すること自体が、『新選組!』から10年弱の間に、堺がキャリアを積み上げ、名実ともにトップクラスの俳優に成長したのに対し、香取が役者として評価されていない現実があからさまとなったように感じた。 普通の役者なら、健全な少年性からスタートして、大人の色気を獲得していくものだが、エロスから始まり健全化していったことの歪みが、40代を目前にしてグロテスクな形で露わになってきたのが、今の香取慎吾の問題だろう。同じSMAPの稲垣吾郎は、そのグロテスクさを良い方向に伸ばし、脇役に回ることで役者として再評価されたが、『SMOKING GUN』で時折見せる気持ち悪い表情を見ていると、今後の香取の可能性も、稲垣の路線にあるのではないかと思う。 (成馬零壱) 前のページ12 最終更新:2014/05/26 21:00 Amazon 『未成年 DVD-BOX』 アイドルの闇を演技で反転させて! 関連記事 『死神くん』――キャラクタードラマで際立つ嵐・大野智の“人生に期待していない”強さ『リバースエッジ』――テレビドラマの異物・オダギリジョーの自己完結性の魅力と焦燥『僕のいた時間』に響く、日常の中で絶望を隠すように微笑む三浦春馬の切なさ『ダークシステム』、テレビ規格を無視した“少年マンガ的”な台詞回しが生む快感『安堂ロイド』の最終地点――日本のSFアクションの限界と木村拓哉の評価 次の記事 ジャニーズにもASKA逮捕の余波 >