ドラマレビュー第34回『ダークシステム 恋の王座決定戦』

『ダークシステム』、テレビ規格を無視した“少年マンガ的”な台詞回しが生む快感

2014/02/26 21:00
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『ダークシステム 恋の王座決定戦』公式サイトより

 TBS系列の月曜深夜のドラマNEO枠で放送されている『ダークシステム 恋の王座決定戦』は一風変わった恋愛ドラマだ。

 主人公の加賀見次郎(Hey!Say!JUMP・八乙女光)は小心者で自分勝手なモテない男。加賀美は白石ユリ(玉城ティナ)に想いを寄せていたが、親友の西園寺轟(弓削智久)に奪われてしまう。ユリを取り戻すために加賀美は部屋に閉じこもり、「サイオンジクラッシャー」という盗聴機能を持った人体破壊装置を開発。実は多重人格のサディストだった西園寺からユリを救出し、彼女と恋仲になる。その後、加賀見の元には、タイムマシーンに乗って10年前からやってきたユリのストーカー・ファントム(板尾創路)や、ユリのフィアンセである盲目のピアニスト・恩田妖一(Hey!Say!JUMP・伊野尾慧)といったライバルが次々と現れる。加賀見は、恋の宿敵たちと自作の秘密兵器で苛烈な戦いを繰り広げていく。
 
 あらすじだけ抜き出すと、何の話だかわかりにくいが、本作は一言でいうと、少年マンガのテンションと文体で作られた恋愛ドラマである。とはいえ、画面は地味で、むさくるしい男たちが、意味ありげだがまったく内容のない台詞をしゃべっているだけの姿が延々と続いていく。作中で加賀見が開発する秘密兵器も、起動する際にクールなデジタル音声が流れるが、基本的にラジコンヘリやデジタルウォッチを改造しただけのチープな物である。よく言えば手作り感覚にあふれた、悪く言えば貧乏臭い作品なのだが、そのもっさりとした空気が深夜のダラダラした気分にとてもハマっている。

 印象に残るのは独特の台詞回し。主人公の加賀見を筆頭にやたらと台詞に拳が入っていて、「俺はゆりちゃんがすきだぁぁぁぁ!」というような力の入った台詞回しや、「~だぜ」「まさか~だというのか!?」といった日常会話では使わないようなカッコつけた台詞が次々と登場する。文字に起こすならば、ほとんどの台詞の語尾に「!」が付けられる感じで、まるで必殺技を叫ぶように台詞を口にするのだ。そして、恋のライバルの何気ない行動を見た加賀見が「なにぃ!」「まさかコイツ……」といった思わせぶりな反応を逐一見せることで、何だか深い意味があるんじゃないかと見ている側に錯覚させていく。

 ストーリー展開もデタラメで、第5~6話では、ユリとの交際を認めてもらうために、加賀見はユリの父親・鉄山(林隆三)の元を訪れる。しかし鉄山から、「言葉の背景(人生に厚み)がない」と言われて婚約を認めてもらえない。家に戻った加賀見は「背景」を身につけるために「ライフカリキュレーター」という人間の背景を数値で測定し、他人の「背景」をコピーするためのマシーンを開発する。加賀見が交際を断られる理由も、解決方法もめちゃくちゃだ。しかし、だんだんこの少年マンガ的な台詞回しとテンションがやみつきになって目が離せなくなるのだ。


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