コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み隔週報」

小林麻耶から考える「ぶりっ子」のカラクリ――なぜ34歳でもぶりっ子でいられるのか?

2014/05/24 15:00

 もちろんこれは、本気で叩いているのではなく、「ぶりっ子VSつっこみを入れる人」というはっきりとした対立構造ができれば、番組が盛り上がるという理由からの演出だろう。特に男性出演者の小林のぶりっ子に関する否定なコメントは、本音とは限らないと見ていた(女は基本的にぶりっ子が嫌いなものだが)。

 ただ、きれいどころとして歩んできた小林にとって、たとえ演出でも叩かれ役を演じることはつらいことなのでは、メンタルが保つのかと思ったものだ。しかし、金曜『バイキング』の主役と言っても過言ではない小林の活躍ぶりを見るうちに、私は「小林がぶりっ子をやれているうちは、大丈夫だ」と結論づけた。なぜなら、ぶりっ子とは、男の「視線」と「承認」から発生するものだからだ。

 私はぶりっ子をこの目で見たことがない。それはなぜかと言えば、私が女だらけの集団に身を置くことが多かったからだと思われる。ぶりっ子とは、“男にとって”かわいい女を演じるということであるので、男がいない場所では生まれない。さらに言うと、男にかわいいと言われるためにぶりっ子になるわけだから、男から「そうです、あなたはかわいいですよ」という無言の承認が下りなければ、成立しないのだ(なので、女が極端に少ない環境の場合、希少価値の勝利で、見た目がかわいくないぶりっ子が発生することも)。34歳であのぶりっ子は痛いと言われる小林だが、きっと視聴者の知らない誰かが、彼女を「かわいい」と甘やかしているから、ぶりっ子でい続けられているのではないだろうか。

 余談だが、TBSアナウンサーの安住紳一郎は、「男はみんなぶりっ子が好き」と述べたそうだが、これはぶりっ子をすればモテるという意味ではない。男からかわいいと認定された子がぶりっ子になるわけだから、男がぶりっ子好きなのは当然の話である。

 叩かれ役は、小林のプライベートにおいても、大きなチャンスである。かつて『アメトーク』(テレビ朝日系)の「立ちトーク」で、フットボールアワーの後藤輝基が「一世を風靡したアイドルが少し落ち目になった時に、ゾクっとする」と語っていたことがある。これは、今ならあのアイドルに手が届くかもしれないと思って興奮する、という意味だろう。間口の広がった小林が、熱愛報道で騒がれる日を期待したい。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2015/02/10 17:24
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