小林麻耶から考える「ぶりっ子」のカラクリ――なぜ34歳でもぶりっ子でいられるのか?
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
「そんなにかわいかったですかぁ、あたし?」小林麻耶
『バイキング』(フジテレビ系、5月16日放送)
男性の前で、自分のかわいらしさ、無邪気さを強調する振る舞いを取ることを、「ぶりっ子」という。お昼の情報番組『バイキング』(フジテレビ系)の名物企画「小林麻耶の花嫁修業」を見ると、あらためて「ぶりっ子とは何か」を考えずにはいられない。
女子大生時代『恋のから騒ぎ』(日本テレビ系)で、愛くるしいルックスとぶりっ子 で司会の明石家さんまを魅了、その後はTBSに女子アナとして入社し、人気を博した小林
麻耶だが、34歳を迎えた現在も独身である。
ぶりっ子が通用するのは、せいぜい20代まで。小林は新境地として「結婚できない」という笑われるキャラに方向転換しようとしたようだが、どう見てもその適性はまるでないと思っていた。ぶりっ子とは、自分のかわいさ、つまり美点を拡大する行為であるのに対し、笑われ役は、自分のルックスや境遇などの弱点を拡大することによって笑いを取るという、いわば正反対の行動であるので、 ぶりっ子を得意とする小林が笑われ役を演じきれないのは、致し方ないだろうと踏んでいたのだ。しかし、『バイキング』での小林は「叩かれ役」として、めきめき頭角を現しているから驚きだ。
「小林麻耶の花嫁修業」において、「こんなにダメな女だから、結婚できません」という企画の趣旨に忠実に、小林は「叩かれる要素」を如何なく発揮する。小林は家事ができない。キャベツの千切りは葉を一枚一枚切る(現在は大分上達)、野菜炒め、卵焼きといった基本的な料理も作れない。これだけでも「いいトシしてこんなこともできないなんて」と、どうぞ叩いてくださいとお墨付きを与えているが、もう1つの重要な叩かれ要素は、小林のぶりっ子行為そのものになのである。
冒頭のセリフもその1つである。マナー講師に「かわいい顔をしてもダメよ」と叱責された際、小林は目をくりくりと見開き、歯を見せるという典型的ぶりっ子スタイルで返答し、講師を呆れさせた。VTRを見た司会の雨上がり決死隊・宮追博之は「こういう女性、嫌い」と語り、ゲストの泉ピン子は「無能な女!」と罵る。共演者の渡辺エリは「こんなんじゃ、お嫁に行けないね」と一刀両断、土田晃之は「ビンタしていいですか?」と発言するなど、出演者全方位から叩かれる、完璧なまでの振る舞いを見せたのだ。