[連載]悪女の履歴書

「男の暴力は当たり前」DV概念なき時代に起こった、「ホステス2人組 夫バラバラ殺人事件」

2014/04/26 19:00

■逃げた妻の前に2年越しで現れた夫

 そんな生活が続いた結婚4年目の43年頃、八代はついに耐えきれず、逃げることを決意する。荷物をまとめて1人名古屋に行き、バー勤めやホステスをしながら転々とするのだが、流れ着いた栄町のキャバレーで知り合ったのが後輩ホステスの真由だった。

 真由は八代より7歳年下だったが、妙に馬が合った。2人の境遇が似通っていたのも一因だったといわれている。真由は熊本市の農家に5人弟妹の長女として生まれた。地元中学を卒業後、集団就職で愛知県の縫製工場に就職。だが1年ほどで退社する。最初はまじめに働いていたようだが、次第に服装などが派手になり、また単純作業に嫌気も差していたという。一度地元に帰ったが、再び名古屋に出て水商売の道に入っていく。

 貧しい子だくさんの家庭に生まれ、中学を卒業後に働かざるを得なかった2人は、周囲から見ても本当に仲がよかったという。2人は昭和46年頃から八代のマンションで同居生活を始めるようになる。だが平穏な生活は続かなかった。夫から逃げ出して2年。ホステスとして順調に働き、貯金もできた八代の前に突然、宏が現れた。

 宏はこの2年間、執拗に八代を探し回っていた。そしてついに八代の居場所を突き止め、乗り込んできたのだ。八代と宏は、まだ籍が抜けていなかった。八代は失踪前、夫に離婚を懇願したが、宏にとってカネを稼ぎ、暴力のはけ口にもなる八代を手放すはずはなかった。そのため、2人は戸籍上は夫婦のままだった。


(後編につづく)

最終更新:2019/05/21 18:52
『逃げる』
何年たっても、逃げ切ることができない