角川慶子の「シロウトで保育園作りました」第62回

母が経営する保育園に通うのは、育児にマイナス? これまでの葛藤を振り返る

2014/04/05 16:00
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新居の地鎮祭の様子。今は仮住まい生活。狭くて体をぶつけてばかりです。こんな狭いところに住んだのは人生初。仮住まいに払う家賃はもったいないですからね

 いよいよ新年度、そして4月4日金曜日から娘が小学生になりました。娘のために作った保育園を娘は卒園したのですが、保育園を作ったことが本当に娘のためになったかというと、よくわかりません。確かに安全で清潔な場所、産地のわかる食材、おいしいランチ、運動、知育……どれを取っても、こんなにやってくれる保育園はありませんが、幼稚園やほかの保育園に預けず、何時間も母親と同じ空間にいるわけで、特殊な環境になってしまった気がします。決して母子分離ができていないわけではなく、娘は複雑なお使いやお留守番もこなし、格闘家ニコラス・ぺタス「ザ・スピリット・ジム」に行っても、「押忍!」と言って小学生ばかりの輪に楽しそうに入ります。

■「ほかの子の靴は履かせないで!」と叫ぶ娘

 今まで触れませんでしたが、この特殊な環境について、お受験で学校側にどう思われるかも心配でした。保育園出身で合格するのは、前例がたくさんありますし、お教室の先生も「心配ない」と言っていたのですが、家業が保育園でそこに登園しているというケースは前例がありませんし、学校側からすると「教育に口を出しそうで面倒」「やっかいだから避けよう」と思われるのではないかと。面接のあった学校は全校、願書を見ながら「お母様の経営されている保育園に現在通っているのですよね?」と確認&質問があり、想定内だったとはいえ、お受験を本気で考えるようになってから、大きな不安要素となっていました。

 保育園を始めて、自分の子どもは後回しになることが多く、娘に寂しい思いをさせてしまったんじゃないかという反省もありました。特に目の前でほかの子どもにご飯を食べさせたり、靴を履かせるのが嫌だったみたいで、「お母さんはやらないで!」と、よく言っていましたね。娘の精神状態が荒れるたび、「保育園をやらなければよかったのか?」「違う保育施設に転園させるか?」を自問自答していました。ところがお受験が終わり、「小学校に通う」と理解してきたあたりから、歯ブラシを持って歩こうとした子どもに「危ないよ」と注意したり、けんかの仲裁に入ったり、急速にお姉さん化してきました。そんな姿を見ると、今さらながら保育園を経営してよかったと思います。

 駒沢の森こども園を始める前は、娘をほかの保育園に預けている間に親子連れを見ると、胸がきゅっと苦しくなって、「乳児を預けて働かない方がいいのでは?」「子どもと一緒にいた方が子どものためなのでは?」と、その時はその時の自問自答がありました。今思うと、どれを選択しても正解も不正解もないような気がします。保育園が大好きだった娘なのに、「保育園に行きたくない!」と急に言い出したことが、駒沢の森こども園を作るきっかけになったのですが、あの時は「なんとかしなきゃ」と強烈に思い、結果、それが自分の人生を大きく変えることになりました。スピ的に解釈すると、「変革の時期は、強烈なメッセージで教えてくれます。たとえ否定的なことが起こっても、最高のプレゼントとなるのです」みたいなリーディング(読み取り)ですよ(笑)。

 余談ですが、お受験の不安要素は父上(角川春樹)の存在もありました。よく思われるか悪く思われるか、学校はもちろん受験担当者によっても大きく差が出るところです(笑)。願書に書かなくても素性はどこでバレるかわかりません。合否を迷うレベルの時、検索するのが今の時代です。受験を考えるようになってから、激しい原稿を書かないように気を遣いましたし、目立つことは全て自粛していました。


 来週から、早起き→お弁当作り→出勤→娘のお迎えの日々が始まります。家族全員、とにかく無事に元気で通えますように!

角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では6歳の愛娘の子育てに奮闘中。

最終更新:2014/04/05 16:00
檻 (ハルキ文庫)
父上ェ……