無所属派は乱暴？　早生まれは不利？　お受験界の無意味な差別

　今回は保育園経営から少し離れたお話です。保育園の目の前に駒沢オリンピック公園という大きな公園があるのですが、先日平日の昼に家畜（フレンチブルドッグ）の“よりこ”と散歩をしていたら、年中～年長くらいの親子が8組ほどいて、お弁当を食べていました。私は、この子たちを、幼稚園のお友達グループかなにかで、幼稚園がお休みだと思ったので、「お兄ちゃんたちは今日幼稚園お休みなの？」と声を掛けました。そしたら、「幼稚園行ってないよ」とのお返事。あ、保育園児かと思い直して、「保育園なの？」と聞くと、「行ってないよ」とのこと。「いくつ？」「5歳」。「あなたは？」と違う子に聞くと、「4歳」。みな幼稚園や保育園には通っていないグループのようです。

　世の中に幼稚園や保育園に行っていない、“無所属層”はこんなにいるものなのだと驚きました。お弁当持参だったので、どこからか遠征してきたのかもしれませんが、少なくとも8組はここにいてコミュニティとしてでき上がっているのです。最近、子どもとの時間をどうやって過ごしていいかわからない専業主婦が急増しているため、幼稚園は2年保育よりも3年保育が人気だというネットニュースを見たのですが、そんなのどこ吹く風といった感じです。

　自分が小学校の時、幼稚園保育園には行かず、小学校に入学した友達がいましたが、乱暴で暴力を振るうという理由から嫌われていたことを思い出しました。しかし、公園で会った“無所属”の子どもたちは、“無所属”の仲間がいるせいか至って普通だったのです。長く話してはいないので、ボキャブラリーや生活スキルはわかりませんが、乱暴だとかけんかっ早いという感じはなく、違和感はありません。もしかしたら、幼稚園や保育園に行かないという選択肢もアリなのではないか？　と思った瞬間でした。幼稚園や保育園は集団生活を学ぶために、とても重要だと思って（信じて）いたのですが、ユニークな人間に育てたいなら“無所属”もアリかもしれません。小学校受験には向きませんが、そんな世界で育てたくない親御さんもいるはずです。

　なぜ小学校受験には向かないかというと、受験では「あなたの通っている幼稚園、保育園の名前は何ですか？」といった基本の質問があるので、ちょっと難しい。もちろん願書をふまえて質問されるので、その質問は出ないかもしれませんが、団体行動ができないと思われ、不利なのは避けられないのです。

■一概に「早生まれ」と言っても……

　先日、近所で有名な幼稚園に通いながら、うちの保育園にも来ているお母さまとランチをした時、その幼稚園の3年保育はきょうだい枠以外、早生まれの子どもは合格させないという話を聞きました。全国的に有名な名門幼稚園はきっちり試験で判断されますが、近所で有名な幼稚園レベルだと面接だけ。何にもできない子どもが入園してくる可能性があるので、早生まれ差別があるみたいです。私立なので、学校側が好きにしていいのですけどね。

　保育園を経営している身からすると、3歳頃までは早生まれ、遅生まれの差が顕著です。しかし、中にはお誕生日に関係なく、新年少（来年度から年少）にもなってトイレはもちろんのこと、水道の蛇口を教えてもひねれない子どももいます。そんな子どもが4月から幼稚園に無事通えるとは思えませんし、幼稚園からすると「外れくじを引いた」と思うことでしょう。私が幼稚園を経営するなら、早生まれ、遅生まれ関係なく、簡単な親子面接だけで終わらせず、長い時間にわたっていろいろなことをやらせてみたいですが……。

　以前、特色のない認可外保育園はバンバン潰れるという話を書きましたが、幼稚園も定員割れの不人気幼稚園が続出しているそうです。しっかり子どもの能力を見分けられない幼稚園では先行きは暗いです。近所の幼稚園でも人気と不人気の差があり、不人気幼稚園は幼稚園なのに、随時入園可という事実に驚きました。習い事教室じゃないんだから！

角川慶子（かどかわ・けいこ）
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バン ギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では4歳の愛娘の子育てに奮闘中。