宋美玄氏×深澤真紀氏特別対談(前編)

女性誌のトンデモ情報を生み出す、世間の欲望と“女子”のコントロール欲求

2014/04/14 11:45

■ロールモデルは目指すものじゃなくて、見て楽しむもの

――女性誌における「ロールモデル」というのも、やっかいな面を持つ表裏一体な存在ですね。

深澤 今の50~60代の女の人で成功してる人は、お家柄もよくて勉強もできて心身が丈夫。そういう人が上司だとすごく大変で、生理痛が理解してもらえないんですよ。私は子宮内膜症もあったしアレルギーもあったしたばこもダメだから、「気持ちが弱い!」とか言われたり、「そもそも生理痛で病院に行くってどういうこと?」と言われたり。そういったスーパースーパーウーマンが最初のロールモデルなんですよね。

 そこを目指すとしんどいし、自分自身を追い詰め続けることになりそう。

深澤 スーパースーパーウーマンは見て楽しむものだから、目指しちゃいけない。ただ、スーパースーパーウーマンじゃないロールモデルは面白くない。私みたいな「憧れられたくないのに表に出る」人間の扱い方が、読者もわからないんですよ。だから「憧れられたい」という人がいて、「憧れたい」と思う読者がいる。その共犯関係ですよね。


――お2人とも女性誌はもちろん、情報番組でのコメンテーターも務められていますが、「出る側」として心がけていることはありますか?

深澤 表に出る時に決めたのは、女問題に迎合するのは絶対にやめようということ。コメンテーターも、女として呼ばれるんです。何か事件があった時に、「同じ女性としてどうですか?」と聞かれる。だから私は絶対に「同じ女として」とは言わない。虐待事件の話題になっても、私は「この母親は逃げるべきだった」「誰かに助けを求めるべきだった」と言うので、ものすごく不満そうにされます。向こうは「許せません! 母親なのに」と言ってほしいんだろうけど……結局マスコミに出る女の人は、そういうことを言うように期待されているんですよ。

 私は女性誌などで、たとえどんな企画が来ても、断らないようにしています。会って、この企画のどこが医学的におかしいか話せば理解してくれるし、読者に間違った情報が伝わらないはずなので。目指しているのは「ビックリ」と「胡散臭い」の間。ある程度、「え、そうなんだ!」と思わないとコンテンツにならない。でもそれが行き過ぎると、「胡散臭い」になる。興味は惹く、でもウソはつかないというのがポリシーですかね。
後編につづく、構成=小島かほり)

深澤真紀(ふかさわ・まき)
1967年、東京生まれ。コラムニスト・淑徳大学客員教授。06年に「草食男子」や「肉食女子」を命名、「草食男子」は09年流行語大賞トップテンを受賞。雑誌やウェブ媒体での連載のほか、情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)の水曜コメンテーターも務める。近著に『ダメをみがく“女子”の呪いを解く方法』(津村記久子との共著、紀伊國屋書店)など。

宋美玄(そん・みひょん)
1976年、神戸市生まれ。産婦人科医。医師として多くの女性を診療する一方、メディアを通して、女性の性や婦人病、妊娠・出産についての啓蒙を積極的に行っている。『女医が教える 本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)はベストセラーに。近著に『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK プレ妊娠編から産後編まで!』(メタモル出版)など。情報番組『とくダネ!』木曜コメンテーター。


『女のカラダ、悩みの9割は眉唾』

「冷えと不妊、逆子」「セックスで美肌」「ピルは副作用が怖い」といった、女性誌が喧伝する“眉唾”情報を、医学的視点から一つひとつ具体的に反論。過度に美化される出産や「膣トレーニング」に代表されるセックス指南に警鐘を鳴らしており、医学的な情報の提供だけではなく、女性自身にカラダと生き方を見つめ直すことを促している。

amazon_associate_logo.jpg

『日本の女は、100年たっても面白い。』

明治から平成までの女子の変遷史。青鞜、モガ、オヤジギャル、だめんず、負け犬、こじらせ女子――どのように女性が社会の抑圧と戦い、権利を勝ち取り、こじらせていったのか。平塚らいてう、岡本かの子、白洲正子、幸田文、ユーミン、林真理子、西原理恵子、上野千鶴子、ちきりんら女性文化人の生き方やスタンスに踏み込み、女性の多様な生き方を紹介する。

amazon_associate_logo.jpg

最終更新:2014/04/15 11:59