女が「イク」にはコミュニケーション、“お客さん”気分のセックスが気持よくないワケ
近年多く出版されている、女性のための「セックス・ハウトゥ本」。すでにイチジャンルを確立したこの分野に、また1冊『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』(メディアファクトリー、アルテイシア著)という本が現れた。この本では、「自分もセックスを楽しみつつ、男をトリコにし、なおかつ愛される」女性のことを“官能女子”と呼び、そんな女性をゴールとするハウトゥ本だ。
官能女子になるために磨くべきは、「テクニックよりもオーガズム力」だといい、まずは自分の“やる気スイッチ”を把握することが大事だという。女性の多くは、自分が性的に興奮するジャンルを把握していないため、“やる気スイッチ”を入れることができないそうだ。ならば、まずそれを探さなければならない。手始めに、女性向けAVやレディコミ、官能小説など、好みのオカズを見つけることから始めるといいそうだ。ちなみに著者は、BLの男性声優CDをオカズにしているという。元々はオタクで二次元に萌えていたという著者は、「10代の頃、自分はどんなジャンルに萌えていたか?」と、起源を辿ってみるのもいいと推奨している。
また、男性とは違い、女性のオーガズムは繊細で複雑。「女性の4割しかセックスでイケてない」というデータや、アメリカで大学生に行った調査では初体験でオーガズムに達した男性は79%だったのに対し、女性はわずか7%というデータもあるそうだ。そもそも、「女性のオーガズムは学習によって得られるもの」らしい。だから、まずは自分で触ってみて、自分の感じるポイントを探す必要があり、「イカされるんじゃなく、イク」体質を目指そうとのことだ。
実際のセックスでは、受け身になるのではなく、自分がイケるように相手に指導する力を身につける必要があるという。指導方法として、事前の会話、行為中のリアクションと言葉と手本が挙げられている。興奮していない平常時にまず言葉で「この前、こんなセックスコラムを読んだんだけど~」といった感じで話を振り、自分がイケる方法を具体的に説明し、行為中はリアクションで相手に伝える。伝え方としては、「あ、そこ!」と腕を握ったり、「それ、すごく気持ちいい!」とピンポイントでオーバーに褒めるといいとつづっている。確かにごもっともな指導方法ではあるが、まず事前の会話でそこまで話せる女性なら、すでに実行してるだろうし、その会話ができない女性はもう“官能女子”にはなれないということなのか、と疑問が沸く。
また、行為中の言葉もお互いの満足度を高める要素だという。「痛い」と言うのではなく、「私は敏感だから、もっと優しくして」。「それはイマイチ」より「こうされると気持ちいいな」と言い換えるなど、一般的なコミュニケーションと同じ「相手に言われて嫌な言葉は使わない」ルールが説明されている。手本についても、「やってもらいたいことを相手にやってあげる」という幼少期に親から言われたような道徳的内容だ。
友人や家族とは問題なくコミュニケーションをとれているのに、なぜかセックスでは“お客さん”や“新入生”マインドになり、コミュニケーションを放棄してしまう女性は少なくないだろう。そんな彼女たちへ、セックスにおいても感情や嗜好を相手へちゃんと伝達し、理解し合うことが大切である、そしてその先に「イク」ことがあるという、人間関係の基本をあらためて教える1冊なのかもしれない。とはいえ、コミュニケーションのルールだって、「よそはよそ、うちはうち」。著者の推奨する方法が、全女性にハマらなくても仕方がないだろう。