バブル世代に向けた女性誌「GOLD」、“苗場プリンス”体験をもう一度と願う!
日本列島の体も財布も冷え込んでいる今日この頃、“45~52歳の女性をターゲットにしたバブル期を過ごした「元祖お嬢様世代」”に向けた雑誌「GOLD」(世界文化社)が誕生しました。「美魔女」とは異なるコンセプトを掲げる40代以降の応援雑誌というのは新しい。ちょっと前まで「女子」ぶっていたこの世代を、どう扱っていいのか悩んでいるのは、本人たちだけではなく雑誌業界も同じようです。バブルは悪でないけれど、ゆとり世代とのギャップは広がるばかり。そして、バブルの片鱗を横目に見ただけのアラフォーライターの筆者としても、この世代は扱いづらいことこの上ないのですが、果たして「GOLD」はどんな世界なのでしょうか。
<トピック>
◎私たちGOLD世代は、ブランドにだって“ワガママ”通します。
◎もう一度、私をスキーに連れてって
◎お洒落はマイ・ウエイ♪ 自分の信じるままに!
■ワガママは言うのではなく通す!
巻頭特集は、「私たちGOLD世代は、ブランドだって“ワガママ”通します。」。どうですか、この自信に満ちた堂々たる宣言。「ワガママ通したい」でも「ワガママ言いたい!」でもなく「通します」。特集名ひとつ取っても、この世代の自己肯定感が伝わるようです。特集のコンセプトは「オーダーメイドにこそ、大人の本当の贅沢がある」とのことで、わがまま=オーダーメイドとして紹介されています。そこで挙がっているアイテムは、グッチのニューバンブー、ディオールのレディ・ディオール、ブルガリ、フェンディと豪華ブランドがずらり。オーダー価格も軽く100万円を突破! まさにバブリー! この価格に動揺するか否かで、読者として、そしてGOLD世代として相応しいのか選考に掛けられているような気もします。しかし、そんな財力を持ってまでして叶えたい欲望は「他人とファッションがかぶりたくない」という見栄なのではないでしょうか。「ブランドにワガママ通したの!」という主張の根底は「みんなと同じじゃイヤ!」という“ユニクロ被り”を嫌う層とあまり変わらないように思えました。
■バブル世代の自己肯定力が顕在化!
全世界において「GOLD」でしか読めないであろう連載「Back to age」。内容は、バブル時代の素晴らしさを振り返るという、「バブル最高!」感を共有することが前提となっております。今回は「choo choo train」といえば、EXILEじゃなくZOOを思い出すGOLD世代ならではのテーマが登場。甘粕リリ子が自身の“苗場プリンス”体験を振り返る「もう一度、私をスキーに連れてって」です!
バブル時代に、スキーブームがあったなんて今では信じられないですが、映画『私をスキーに連れてって』が爆発的にヒットしたことから、若者はこぞってスキーへ出掛けるようになり、そしてゲレンデでは恋に落ちたそう。バブルならではのお伽話のような話ですが、同作のプロデューサーは「あの時代を今ではバブルと呼ぶけれど、真っただ中にいた僕らは、ただ消費文化を謳歌して豊かに遊び、新しいものをクリエートしたかっただけ」と、誌面で振り返っていました。この自己肯定力が、現代では下世代への無言の圧力となってしまっているんだよな、と筆者は思ってしまいました。
誌面では、「46歳、いろいろあるよね、みたいな台詞が登場する『私をスキーに連れてって』の続編に期待します!」と、GOLD世代のテンションがスパークしてますが、あの映画で恋を盛り上げたのは「CQCQ」ではじまる無線機での会話シーン。携帯が雪山でもつながる現代では、ゲレンデの恋は新宿・渋谷と変わりないかもしれません。それにしても、甘粕の書く文章は違和感なく読み進められたのに、バブルのゲレンデ模様を語る泉麻人の「……なんて瞬間の微妙にセンチメンタルな心地は悪くない」という言い回しには、センチメンタルどころか、すごく時代を感じてしまいました。
■桜沢エリカがバブルを体現している!?
「お洒落はマイ・ウエイ♪ 自分の信じるままに!」の特集ではパリ、NYのGOLD世代のファッションを紹介しています。意外にも、内容はゴージャスアイテムの紹介ではなく街のファッションスナップ特集。秋冬物はセールにかかり、春夏物はまだ紹介できないという狭間のシーズンだけに、どうしても1月売りのファッション誌はスナップ特集になってしまうので仕方ないですね。しかし、気になったのは雑誌後半にある桜沢エリカのファッションコラムです。コラム内で桜沢が気になるアイテム&着こなしとして紹介している物が、どう見ても20~30代のファッションそのもの。かつてはクラブ系としてならしていた桜沢エリカも、もう50歳近くでしょうか。厚底サンダルにガーリーなファッションは、少々チャレンジャーすぎる気がします。「ユニークなデザインだが、意外にも普通の人が着やすい」とフォローしていますが、50歳でこれを着こなすのは相当の勇気がいります。うっかり街に出たら、かなりイタい人になりそう……。
GOLD世代の象徴として連載を任したのだと思いますが、このページから窺えたこの世代像は「セルフイメージがまだ20代」というところ。でも、「どこにもないものが見たい」という雑誌のスローガンを、どこにもいないイタい女性という点で叶えているのかも?
特集「大人のわがままゴージャス」な世界観が現しているように、「GOLD」はやはりバブル的なゴージャスを歓迎している雑誌でした。そしてそれを象徴するかのような、資産運用のページに出てくる茶髪ガングロの40代(?)イケメンコンサルト、ショーン・マクアードル川上があまりにもバブル臭ぷんぷんで、一度見たらしばらく忘れられそうにありません。
(中島ホタテ)
※本記事内で「GOLD」版元を光文社と表記していましたが、正しくは世界文化社となります。関係者各位にご迷惑をお掛けしましたこと、謹んでお詫び申し上げます。