ブランド品への欲望を共有することで、読者の一体感を生む「I LOVE mama」
ブランドを持つ人の世界と、今ここにいる世界の差を見せつけられるといえば、特集2「一流ブランド顔負けの極上プチプラ品」も同様です。コスメ、食器、ダイエットグッズ、雑貨など、高級ブランド品とそっくりなプチプラグッズを集めて紹介しています。例えば……
・3990円の品にそっくりの735円のルージュ
・5250円の品にそっくりの945円のファンデ
・10500円の品にそっくりの588円の化粧水
・12600円の品にそっくりの260円の皿
(※誌面にはメーカー名、品名が書いてあります)
靴やバッグなどのファッションアイテムはないものの、特集1でブランド品へのあこがれを煽りに煽っておいて、特集2で「シャネル顔負け」「本物と並べても見劣りしない出来ばえ」と書いてしまう図太さ! あっぱれです。しかし、こんなに高級ブランドへの憧憬の念がむき出しだと、かえってみじめな気持ちになると思うのですが、どうでしょう? いつもは、ブランド志向と等身大の“うちら志向”の配合が2:8くらいでバランスがとれていたのに、今月号は逆転して8:2になっている印象。これでいいのでしょうか。前述のように、手が届かないことのフラストレーションが募るんじゃないかなあ?
■みんな大変、みんながんばってる
気を取り直して、「働きママ シンママ 子だくさんママ 密着24時間!」という企画を見てみましょう。それぞれのママがどんな1日を過ごしているのか、密着して紹介しています。これが、タイトルにあるように「働きママ」「シンママ」「子だくさんママ」の3パターンだけではないんですよ。「ラブモ」「フルタイムママ」「パートママ」「0歳児ママ」「1歳児ママ」「2歳児ママ」「マタママ」「シンママ」「子だくさんママ」「大家族ママ」と10人分の24時間を掲載しているんです。テキトーに3~4パターンを見せてごまかさないところに、「I LOVE mama」の誠実さを感じました。バリエーションが豊富なほうが、読者が共感したり比較したりして参考にしやすいでしょう。
と言いつつ、正直な話、これといって子育てや家事の参考になるようなことは何も書いてありませんでした。ただただ10人ともハードな1日が綴られている。実用的な情報がなくても、読者にとってみれば「自分以外のママもがんばってるんだ」と知ることができるだけで励みになるんでしょうね。特集1の「気になるものリスト」も、そういう意味があるのかもしれません。「シャネルほしい」「ルブタンほしい」という欲望の共有化。ひとりで見る夢は寂しいけど、読モも読者もみんな同じ夢を見ていると知れば、叶わない夢でも楽しくなる。LINEやSNSと似ているけど、そこまで近すぎない、めんどくさくない。雑誌だからこそ成立するほどほどの共感が「I LOVE mama」にはあるわけです。「I LOVE mama」、ギャルママじゃない方にもお勧めです。
(亀井百合子)