幸せな主婦像から脱却した「VERY」、わかったふうな顔の裏に潜む「複雑な牽制合戦」
■不穏な「VERY」流・少女漫画特集
では、「VERY」がいう社会性とは一体なんなのか? 今月号の社会性が感じられる記事と言えば、「『女の敵は女』論争を超えて」や「私たちがいま読みたい本とマンガ」のページ。
マンガ特集というのは、ほかの女性誌でも定番ですが、「VERY」の場合は「妻であり、母であり、女である」という大きなテーマがあるだけに、「夫との関係に悩んだ時に、育児にちょっと疲れた時に」読んで心が軽くなるかもという作品がチョイスされています。
少女漫画というと、かつては夢や憧れを見せてくれるものでした。しかし現代の大人の女性から好評を得ている少女漫画は、そんなに甘くはありません。「VERY」でも、「家族になる方法はひとつじゃない」「子どもを持たない選択」「もし、夫が浮気をしていたら」「もし、夫より好きな人ができたら?」「なんで結婚したんだろう、と思ったときに」「他の家庭はどうして幸せそうに見えるのだろうか」「出産の現場で起きていること」など、なにやら不穏なテーマのもと、『にこたま』(渡辺ペコ、講談社)や『あなたのことはそれほど』(いくえみ陵、祥伝社)などの漫画や本がセレクトされています。
こういったページを見ていると、「VERY」が現在、お花畑状態から目を覚まし、現実を直視しだした様子がありありとわかります。ただ、それは単純な進化ではなく、冒頭にも書いたように “複雑化”しているともいえます。
「お金持ちの旦那がいて、美しく、素敵な暮らしをしている人」などという、単純な指標が女性の憧れとなる時代は過ぎ去りしました。社会性を身に着け、リテラシーを持ち、知性も、コミュニケーション力もあり、そしてなおかつ美しく、男女・コミュニティ関係なくうまくやっていける――そういう女性が、これからの「VERY」のモデルとなっていくのでしょう。ただ、そんな完璧すぎる理想像に、女性たちがどこまでついていけるのか。さらに、たくさんの指標が生まれたことで、目に見えない深いところでの、女同士の争いが生まれる可能性もあります。
こういった女性が新たなロールモデルになるのかは未知数です。しかし、だからこそ、広告ページにのみ残る、「幸せ」「愛され」というワードに、浮いている感と同時に妙な安堵感を覚えるのかもしれません。
(芦沢芳子)