サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー“上品な奥様向けの雑誌”「VERY」が、「婦人公論」を”下品”呼ばわり! カルチャー [女性誌速攻レビュー] 「VERY11月号」 “上品な奥様向けの雑誌”「VERY」が、「婦人公論」を”下品”呼ばわり! 2010/10/07 21:00 女性誌速攻レビューVERY 「VERY」 2010年11月号/光文社 先月号は大特集に「コンフォートシューズ」を持ってきて、靴だけで30ページ近く割いたわけですが、今月号も大特集に「冬のおしゃれはダウンに出る!」と称し、同じようにボリューム満点のファッションページとなっております。そして、表紙を見る限り、今月も「VERY」らしさは影を潜めているように思えてなりません。先月号のレビューの際に、「飛ばし過ぎたら『こら!』と言いたくなるのに、大人し過ぎると『大丈夫?』と励ましたくなる、『VERY』と筆者の恋の駆け引きはまだまだ続きそうです」と記しましたが、これは不測の事態。「母さん、夏の終わりに豹になる」とか「イケダンの隣に私がいる!」とか「気になるのは『ハンサムな彼女』」とか、見るだけでジュンジュワ~となる名コピーがないと、もう「VERY」には発情できません。あら、いやだ! すみません、取り乱しました。このラブコールが「VERY」編集部に届くかは不明ですが、今月も張り切ってレビューしたいと思います。 <トピック> ◎冬のおしゃれはダウンに出る! ◎小島慶子の「もしかしてVERY失格!?」 ◎”TOKYOでこ美人”現象 ■写真だけじゃ伝えられないこともある 今月号のファッションページは、「VERY」が作り出した架空モデル・エレカ様の登場も少なく、パンチの利いた企画が少ない中、たま~に出てくる井川遙の「なんでこの写真選んだの?」という表情の数々と、「女らしく、スエットデビュー」という企画が見所。いわく、スエットは「楽してオシャレな『おうちスタイル』に欠かせない!」ということなのですが、見ている限りフツーのスエット。でもお値段が、4,095円~2万9,400円! きっと肌触りや素材が違うんでしょうけど、デザインは、前歯が抜けた跡にタバコを差し込んだままパチンコ打ってるオジサンが着用している物と全く変わりがございませんので、ご注意を! ■期待高まるニューフェイス 早々にファッションページは読み終えて、今月の見所は読み物ページ。「VERY」といえば、以前からご案内しています「お受験の花道」、直木賞作家・桐野夏生氏の連載「ハピネス」と、「VERY」的世界観のクラッシャーがありますが、ここにきて元TBSアナウンサーの小島慶子さんによる新連載が始まりました。その名も「コ・ジ・マ・メ・セ・ンのもしかしてVERY失格!?」です。 初回のテーマは「幸せ」。郊外の新興住宅地から2時間近くかけて中高一貫校に通い、玉の輿志向の母親に育てられたというリンダ(学生時代の小島のあだ名)。やがて同級生には「図書館=広尾図書館」、「夏休み=軽井沢またはハワイ」という常識を存在することを知り、「嫉妬の無間地獄」に堕ちる手前に。ただそこから、彼らの幸せが「本人の実力なのか、それともブランドに恵まれているだけなのか」を見極めるようになったと語ります。「あの子の顔が可愛いのは実力だな(でも社長令嬢ブランドで底上げの感あり)、「オシャレのセンスは実力(っていっても渋谷に住んでりゃ何着たって渋カジ)」などなど。それもこれも「羨望の落とし所を見つけるために」というのだから賢い。 実際に、リンダのように「上」を見て打ちひしがれた経験をしている人が「VERY」読者だと思うんですよ。「自分の持っているモノ」に無自覚になれるほど恵まれていなくて、中産階級よりちょっと上の家庭で育ってしまったがゆえに「落ちる」ことも許されず、「上」を見るほどに出自を嘆く。そこで、リンダみたいに「劣等感を中庸に変える」ことはできずに、今に至るまで他人の「羨望の的」になることで自己実現を成し得ている。そんな「VERY」読者に、リンダの言葉はどのように響いていくのか、非常に楽しみです。 ■「VERY」と「婦人公論」は双子だよ? そして、巻末に近付いたところに、これまた読み応えのあるコーナーがございました。「VERY文化部」というカルチャーページにある、「映画同好会」。作家・松久淳が映画を紹介するふりをして、親父トークを繰り広げるというコーナーです。出だしから、「VERY」と見比べながら、「ご近所ママ同士で浮気サークルを結成、PTAの飲み会は万能の言い訳」という「週刊SPA!」の見出しを読みあげ、 「(略)『セックスが大好きで夫じゃ満足できないの』って言う女性はそんなに嫌いじゃないけど、『いくつになっても女はときめきたいの』とか気持ちの悪いことを言うおばちゃんは苦手かな」 と一蹴。それはいいですが、問題はそれを聞いたライターの返しがひどい。 「そんな話は『婦人公論』でやってください! うちは上品な奥様向けの雑誌なんです!」 ムキーッ! 「婦人公論」の何が下品なのさ! 「義理の弟が作った借金のせいで家庭が崩壊」したり、西原理恵子と柳美里が不幸自慢をしたり、「トウモロコシ畑で後ろから攻められたり」してるだ……け……すみません、もしかしたらとっても下品なのかもしれません。ただ、最後に一言だけ発言の機会を与えてください! 「でもね、『VERY』と『婦人公論』って似た者同士だよ♪」 というわけで、今月号は下ネタに始まり、下ネタに終わるという最悪のシナリオになってしまいました。途中で小島慶子コラムを語っているあたりは、別な人が書いたと思って頂いた方がいいかもしれません。来月号の予告を見ても、目ぼしいものはなく、恋が終息の方に向かっています。「彼氏は短期留学中」な女学生、という心のコスプレでもしようかと悩み始めた、秋まっただ中です。 (小島かほり) 「VERY」 「R」が「R」が…… 【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでます】 ・夫とは2カ月に1回……「VERY」のセックスレス特集から見えた「女の地獄」 ・「VERY」創刊15周年記念号に落とされた、桐野夏生という爆弾 ・「VERY」の名物コーナー、「お受験の花道」担当編集者に直撃インタビュー 最終更新:2010/10/07 21:00 次の記事 スタッフの自己満足番組を救った、草なぎ剛、周富徳、アルパカの真剣さ >